研究概要 |
多くの微細藻は窒素や硫黄成分の欠乏した条件下で、中性脂質のトリグリセリド (TAG)を蓄積することから、バイオ燃料生産の供給源として注目されている。本研究では脂質蓄積が異常となった緑藻クラミドモナス変異体を取得することで、まだ未解明な点の多い微細藻の脂質蓄積誘導の分子機構を明らかにすることを目的とした。薬剤耐性遺伝子をランダム挿入した変異体約2万株のプールから、中性脂質に結合する色素の蛍光強度を指標として、セルソーター分取システムFACSにより脂質を高蓄積する変異体を単離した。このうち、栄養欠乏下で脂質蓄積誘導が低下した変異体No.71をtar1(TAG accumulation regulator1)変異体と改称し、詳細な解析を進めた。この株では硫黄欠乏下および窒素欠乏下の両栄養欠乏下におけるTAG蓄積量が野生型の約30%に低下していた。野生型とtar1変異体の窒素欠乏および窒素十分条件でのRNAseq解析の結果、変異体では窒素欠乏応答に関する遺伝子(ATM4, NRR1, DGAT1, PDAT1など)の窒素欠乏下での発現誘導性が低下しており、栄養濃度のセンシング機構に変異を持つ可能性が示唆された。tail PCR法によるDNAタグ挿入領域の解析により、機能未解明の遺伝子の5' UTRへのタグ挿入があることが確認された。この遺伝子の野生型配列を変異体に導入して発現レベルを回復させたところ、TAG蓄積量は野生型レベルに回復し表現型を相補することが出来た。また野生型との交配による次世代株を作出したところ、当該遺伝子へのタグ挿入と変異表現型が連鎖していた。以上のことから、tar1変異体の原因遺伝子を同定出来たと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度受入額のうち、物品費1,900,000円、旅費100,000円、謝金0円、その他0円としていたが、実支出額は物品費1,123,868円、旅費171,200円、謝金0円、その他545,745円であり、その残額が159,187円となった。 残額159,187円については、翌年度分請求額と合わせて物品費あるいはその他支出項目として使用する。
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