研究課題
若手研究(B)
1. HDL形成による過剰コレステロールの除去と炎症反応の抑制~動脈硬化症モデル~平成25年度は細胞内でのHDL形成を検出するためのapoA-Iプローブの開発を行った。HDL粒子へ組み込まれることで引き起こされるapoA-Iの周囲環境変化を環境感受性プローブPOLARICで検出することにより、HDLの形成を蛍光強度変化によって検出可能であるのかを評価した。ApoA-Iの53番目に導入したシステイン残基をPOLARIC-maleimideにより標識することでapoA-I-POLARICを作成した。ApoA-I-POLARICをコール酸透析法により人工HDLに組み込むと、蛍光強度が約4倍に増加したことから、試験管内でのHDL形成をPOLARIC蛍光強度変化により検出できることが示された。次に、ヒトABCA1を過剰発現させたハムスター由来BHK細胞によるHDL形成の測定にapoA-I-POLARICを適用した。ABCA1発現細胞の培養液へapoA-I-POLARICを添加すると、apoA-I-POLARIC濃度に依存して培養液の蛍光強度が増加した。一方、ABCA1を発現していない細胞では蛍光強度は増加しなかった。また、ABCA1発現細胞の培養上清からゲル濾過クロマトグラフィーにより分離したHDL画分が高い蛍光強度を示したことから、apoA-I-POLARICの蛍光強度の増加がHDL形成に起因していることが明らかになった。このように、ABCA1に依存したHDL形成をapoA-Iの周辺環境の変化により検出するという新規の方法を開発することに成功した。2. HDL形成による過剰コレステロールの除去と炎症反応の抑制~パーキンソン病モデル~ミクログリア培養細胞において核内転写因子LXRの活性化によりABCA1の発現が誘導され、HDLの形成が起こることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
HDL形成をapoA-Iの周囲環境変化により検出するという新規HDL形成評価法を開発した。また、ミクログリア培養細胞においてもマクロファージと同様に、核内転写因子LXRの活性化によりABCA1によるHDL形成が引き起こされることを明らかにした。
平成25年度に開発した新規HDL形成評価法を細胞でのHDL形成の可視化に応用する。これにより、動脈硬化病巣で見られる細胞内に脂質を多く蓄積したマクロファージ細胞において、細胞内の過剰脂質をHDL形成により除去する機構を詳細に検討する。また、HDL形成によりミクログリアにおける炎症反応が抑制されるのかを評価する。ミクログリアの炎症反応をHDL形成が抑制した場合、その機序を細胞のコレステロール量に着目して検討する。
新規HDL形成評価法の開発が興味深い方向に進展したため、平成25年度は本方法の開発を重点的に推進した。このため、遺伝子発現評価用の試薬の購入を次年度に繰り越した。しかし、ミクログリア細胞を用いた予備検討の結果が良好であるため、平成26年度に遺伝子発現解析が順調に進むと考えている。遺伝子発現解析に必要となる試薬を購入する。
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