真核生物のタンパク質の翻訳後修飾は生体膜との親和性獲得や、その機能発現に重要である。しかし、一般的な組換えタンパク質生産系においては、タンパク質の翻訳後修飾の制御は困難である。本研究の協力研究者である戸澤譲教授らは、タンパク質生産系であるコムギ無細胞翻訳系を利用することで、合成タンパク質の効率的なN-ミリストイル化のシステムの構築に成功している。しかし、現在のところ、無細胞翻訳系を利用したS-パルミトイル化修飾については実現していない。そこで本研究では、制御可能なタンパク質翻訳後修飾を可能とするため、非天然アミノ酸をタンパク質に導入する系と、銅(I)を触媒とした環状結合反応(クリックケミストリー)を利用することで、機能型の膜タンパク質の調整技術の構築を目指す。 25年度には研究目的に間接的に関連する重要な事象を確認することができた。脂質二重膜を無細胞系に添加することにより合成された膜輸送タンパク質を活性型として、共同研究者により調製可能となった。これに加えて、膜貫通領域を有するイオンチャンネルタンパク質や、フェロキラターゼのような膜結合領域を持たない膜接着型タンパク質についても、フォールディングの促進された機能型タンパク質の調製が本研究により可能となった。 26年度には、25年度で得られた研究結果を発展させるべく、膜接着型タンパク質であるフェロキラターゼの脂質二重膜によるフォールディング促進研究を行った。平成27年度には、新転地での実験環境を整え、蛍光を利用したフェロキラターゼの検出法についての生化学データを収集した。現在実験結果の論文執筆作業を進めている。
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