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2014 年度 実施状況報告書

軟体動物貝殻の炭酸カルシウム結晶の形態と欠陥を制御する有機基質の探索と機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 25850078
研究機関東京大学

研究代表者

鈴木 道生  東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (10647655)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードバイオミネラリゼーション / アラゴナイト / アコヤガイ / ペプチド / 結晶欠陥
研究実績の概要

軟体動物の貝殻は炭酸カルシウムと少量の有機物から構成されるバイオミネラルである。貝殻内の炭酸カルシウムはそこに含まれる少量の有機物によって結晶の形態や方位が制御され、無機的な環境には存在しない特徴的な構造を有している。これまで貝殻からは多くの基質タンパク質の存在が明らかにされ、石灰化への関与が示唆されてきたが、炭酸カルシウム結晶の形態や結晶欠陥の制御をする有機基質については未だ明らかにされていない。そこで、本研究では結晶形態と欠陥に非常に大きな特徴を有する貝殻微細構造に着目し、その形態と欠陥を制御する有機質の探索と機能解析を行うことを目的とした。
二枚貝の蝶番には靭帯と呼ばれる構造が存在し、その内部に存在するアラゴナイト結晶は厚さが50 nm、長さが数umもある繊維状の構造を有しており、その形成メカニズムについては不明のままである。2013年度における研究で、アコヤガイ貝殻靭帯部のアラゴナイト結晶の内部から石灰化を制御する酸性ペプチドであるLICP-1を見出した。また、LICP-1の遺伝子配列を取得したところLICP-1の後半にはさらに10アミノ酸から成る配列が存在することが判明した。LICP-1は酸性のペプチドであったのに対し、後半のペプチドは塩基性であった。これらのペプチドを固相合成法より合成し精製を行い、炭酸カルシウム結晶形成阻害活性および炭酸カルシウム結晶形成実験を行った。その結果、酸性のペプチドであるLICP-1のみが炭酸カルシウム結晶と相互作用し、炭酸カルシウム結晶形成に影響を与えることが判明した。
また、アコヤガイ靱帯のアラゴナイト結晶間の不溶性有機基質から細胞外マトリックス分解酵素(MMP)の内在性の阻害剤であるTIMPを新たに見出した。TIMPは繊維状の構造の形成に関与するという知見が知られており、靱帯の繊維状アラゴナイト結晶の形成に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで申請者は特徴的な結晶構造と欠陥を有するアコヤガイ靱帯のアラゴナイト結晶からLICP-1とTIMPという二つのペプチドを新たに見出した。LICPは炭酸カルシウム結晶と相互作用し、アラゴナイト結晶のc軸方向の成長を抑制するという活性が明らかになった。このような低分子のペプチドが石灰化組織の形成に関与していることを見出したのは初めてのことであり、結晶の形態を制御する因子の探索という初期の目的を達成していると考えられる。
また申請者は有機基質の繊維状構造の形成に関与していると思われるTIMPもアコヤガイ靭帯から見出している。この研究成果については特許を出願しており、今後の研究の展開が期待される。以上のことから研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後も炭酸カルシウム結晶の形態と欠陥を制御する因子を明らかにするために、アコヤガイ靱帯からの有機基質についての解析を進める予定である。
LICP-1についてはより詳細に石灰化に与える影響の解析を進める。具体的にはLICP-1の後半にコードされたペプチドの役割やその切断様式のメカニズムを解明する予定である。またTIMPについては、MMPの阻害活性の確認およびアコヤガイ生体内での反応機構と繊維状構造の形成メカニズムを明らかにする予定である。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Identification of ligament intra-crystalline peptide (LICP) from the hinge ligament of the bivalve, Pinctada fucata.2015

    • 著者名/発表者名
      27.Michio Suzuki, Toshihiro Kogure, Shohei Sakuda, Hiromichi Nagasawa.
    • 雑誌名

      Marine Biotechnology

      巻: 17 ページ: 153-161

    • DOI

      10.1007/s10126-014-9603-y.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Twin density of aragonite in molluscan shells characterized using X-ray diffraction and transmission electron microscopy.2014

    • 著者名/発表者名
      26.Toshihiro Kogure, Michio Suzuki, Hyejin Kim, Hiroki Mukai, Antonio G. Checa, Takenori Sasaki, Hiromichi Nagasawa
    • 雑誌名

      Journal of Crystal Growth

      巻: 397 ページ: 39-46

    • DOI

      10.1016/j.jcrysgro.2014.03.029

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 巻貝の貝殻形態形成におけるキチナーゼの機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      米澤舞、小暮敏博、遠藤一佳、清水啓介、作田庄平、○鈴木道生
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] カイガラムシ色素の生合成遺伝子に関する研究2015

    • 著者名/発表者名
      53.豊田将大、山城敬範、菊池直也、片山琢也、堀内裕之、鈴木道生、長澤寛道、作田庄平
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] 化学発光を利用したHPLCポストカラム法によるFe(III)キレーター分析法の開発と応用2015

    • 著者名/発表者名
      有賀智子、井村祐己、鈴木道生、吉村悦郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] Fusarium oxysporumを用いたCdSe量子ドットの生成2015

    • 著者名/発表者名
      山口賢明、鶴田嘉二朗、井村祐己、鈴木道生、吉村悦郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] 紅藻スサビノリの無機栄養欠乏での遺伝子発現と栄養状態評価2015

    • 著者名/発表者名
      吉村航、井村祐己、鈴木道生、吉村悦郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] precocene IIによるROS産生を介したトリコテセン生産の阻害機構2015

    • 著者名/発表者名
      古川智宏、鈴木道生、作田庄平
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] 植物由来食品因子エリオジクチオールによるマウス制御性T細胞誘導機能の解析2015

    • 著者名/発表者名
      58.松本優樹、松田幸、古川智宏、鈴木道生、作田庄平、清水誠、戸塚護
    • 学会等名
      日本農芸化学会2015年度(平成27年度)大会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-29
  • [学会発表] アコヤガイの靭帯特異的低分子ペプチド(LICP)の構造と石灰化に関する機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木道生、小暮敏博、作田庄平、長澤寛道
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] モノアラガイの貝殻形態形成におけるキチナーゼの機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      米澤舞、小暮敏博、作田庄平・鈴木道生
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] アコヤガイ稜柱層カルサイト結晶内の小角粒界とキチンの関係2014

    • 著者名/発表者名
      近都浩之、奥村大河、小暮敏博、作田庄平、鈴木道生
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] アコヤガイのCa2+応答に関与する有機分子に関する研究2014

    • 著者名/発表者名
      松浦晃宙、作田庄平、鈴木道生
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] 乳酸菌における金ナノ粒子生成機構の解明2014

    • 著者名/発表者名
      菊池郁也、井村祐己、鈴木道生、小暮敏博、吉村悦郎
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] Fusarium oxysporumを用いた CdSe量子ドットの生成2014

    • 著者名/発表者名
      鶴田嘉二朗、井村祐己、鈴木道生、小暮敏博、吉村悦郎
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] 生体鉱物におけるあられ石の格子定数と方解石への転移温度に関する考察2014

    • 著者名/発表者名
      吉村真裕、鈴木道生、小暮敏博
    • 学会等名
      第9回バイオミネラリゼーションワークショップ
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2014-12-12 – 2014-12-12
  • [学会発表] アコヤガイ貝殻稜柱層カルサイト結晶内におけるキチン分解酵素の役割2014

    • 著者名/発表者名
      近都浩之、奥村大河、小暮敏博、作田庄平、鈴木道生
    • 学会等名
      第28回キチン・キトサンシンポジウム
    • 発表場所
      順天堂大学
    • 年月日
      2014-08-20 – 2014-08-21
  • [学会発表] モノアラガイの貝殻形態形成に関与するキチナーゼの解析2014

    • 著者名/発表者名
      米澤舞、小暮敏博、作田庄平・鈴木道生
    • 学会等名
      第28回キチン・キトサンシンポジウム
    • 発表場所
      順天堂大学
    • 年月日
      2014-08-20 – 2014-08-21
  • [学会発表] Identification of ligament intra-crystalline peptide (LICP) from the hinge ligament of the bivalve, Pinctada fucata.2014

    • 著者名/発表者名
      Michio Suzuki, Toshihiro Kogure, Shohei Sakuda, Hiromichi Nagasawa
    • 学会等名
      Gordon Research Conference (Biomineralization)
    • 発表場所
      Colby-Sawyer college, New London, USA
    • 年月日
      2014-08-17 – 2014-08-22
  • [学会発表] 貝殻内有機基質の分解酵素が微細構造形成に与える影響の解析2014

    • 著者名/発表者名
      鈴木道生
    • 学会等名
      第16回マリンバイオテクノロジー学会大会
    • 発表場所
      三重大学
    • 年月日
      2014-05-31 – 2014-06-01
    • 招待講演
  • [備考] 東大農学部分析化学研究室

    • URL

      http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/analchem/

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公開日: 2016-06-01  

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