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2013 年度 実施状況報告書

伝統生薬チョウトウコウに含まれるアミロイドβオリゴマー化抑制物質の同定と作用機構

研究課題

研究課題/領域番号 25850080
研究種目

若手研究(B)

研究機関京都大学

研究代表者

村上 一馬  京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80571281)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードアルツハイマー病 / アミロイドβ / 凝集 / 漢方生薬 / 構造決定 / チョウトウコウ / トリテルペノイド / NMR
研究概要

アルツハイマー病(AD)の原因物質であるアミロイドβタンパク質(Aβ42)は,オリゴマー化(凝集)することによって神経細胞毒性を示す.このことから,Aβ42の凝集阻害剤はAD治療薬として期待される.近年,漢方薬の抑肝散はAD病態の進行を遅らせることが知られており,すでに臨床で用いられている.しかしながら,Aβ42の凝集能への影響など作用機構の詳細はほとんど明らかになっていない.最近,本研究グループは,抑肝散の構成生薬の一つであるチョウトウコウ(アカネ科カギカズラUncaria rhynchophylla)のアセトン抽出物がAβ42の凝集能を強く抑えることを見いだした.本研究は,チョウトウコウに含まれる活性物質を単離・同定するとともに,その凝集抑制メカニズムを明らかにすることを目的としている.
中国湖南省で採集されたチョウトウコウ(かぎ状の乾燥茎刺部)のアセトン抽出物を濃縮し,酢酸エチルと水で分配した.得られた酢酸エチル可溶区について,Aβ42の凝集能に対する抑制活性を指標にして,各種クロマトグラフィーにより分画した.凝集抑制能は,チオフラビンT蛍光法によって評価した.その結果,各種機器分析(NMR,MS,IR,旋光度)より,トリテルペノイドエステルであるウンカリン酸A~Dの4種類を単離・同定した.これらはいずれも既知化合物である.一方,チョウトウコウの薬理活性を示す主な成分であるイソリンコフィリンには凝集抑制能はなく,本研究によってチョウトウコウに含まれる凝集抑制物質が初めて明らかになった.ウンカリン酸A~Dのようなトリテルペノイドとフェルラ酸構造からなる化合物は,新しいタイプの凝集抑制物質である.特に,ウンカリン酸C, Dは凝集初期段階である核形成過程を抑えている可能性が高く,線維伸長過程を抑制する従来のカテコール系凝集阻害剤とは異なる作用をもつことが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ADの原因物質であるAβ42の凝集阻害剤として,チョウトウコウのアセトン抽出物から活性物質を単離・同定したことから,初年度の目標は達成した.また,同定したウンカリン酸は,凝集の初期段階である核形成過程を特異的に抑制していたことから,凝集後期の線維伸長過程を抑える従来のカテコール型凝集抑制剤とは異なるタイプの阻害剤であることも明らかになった.さらに,チョウトウコウの高極性画分に,より強力なAβ42凝集抑制能を見いだしたことから,新たな阻害剤の存在が示唆される.以上より、当初の研究計画以上に進展していると判断できる.

今後の研究の推進方策

前年度に,Aβ42の凝集抑制物質の一つとして同定したウンカリン酸C, Dは,Aβ42のモノマーと相互作用することで凝集初期段階である核形成過程を抑えている可能性が高い.本年度は,ウンカリン酸D(ウンカリン酸Cの幾何異性体)とAβ42との相互作用についてNMR法で解析する.具体的に,15Nで全標識したAβ42を用いて2次元1H-15N HSQCスペクトルを測定し,各アミノ酸残基の化学シフトの変化から作用部位を調べる.一方,転移交差飽和法より,ウンカリン酸D側の作用部位に関する情報を得る.これらのNMR測定は,医薬基盤研究所(大阪府茨木市)の共同利用装置である800 MHzのNMR装置(Bruker社製,AVANCE II)を用いて行い,赤木謙一博士にご助言いただく.
さらに,チョウトウコウの高極性画分にもAβ42の凝集抑制能を見いだしたことから,本画分についても分画・精製を進めることによって,凝集阻害物質を単離・同定する.凝集阻害能は,前年度と同様にチオフラビンT蛍光法によって評価する.さらに,得られた化合物について,NMRを用いてAβ42との相互作用部位に関する解析も上記と同様に行う.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ポリフェノールによるアミロイドβ42の凝集抑制機構

    • 著者名/発表者名
      村上一馬ら
    • 学会等名
      第6回タンパク質の異常凝集とその防御・修復機構に関する研究会
    • 発表場所
      京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)
    • 招待講演
  • [学会発表] ポリフェノールによるアミロイド β の凝集阻害機構

    • 著者名/発表者名
      村上一馬ら
    • 学会等名
      第3回生理化学ユニットシンポジウム
    • 発表場所
      京都大学楽友会館(京都市)
    • 招待講演
  • [学会発表] Vitamin C and silymarin restores Aβ oligomerization and behavioral abnormality in Alzheimer’s pathology

    • 著者名/発表者名
      Murakami, K. et al.
    • 学会等名
      Alzheimer’s Association International Conference 2013
    • 発表場所
      Boston Convention Center(Boston MA, USA)
  • [学会発表] 酸化ストレスに着目したアミロイドβペプチドの神経細胞毒性発現機構

    • 著者名/発表者名
      村上一馬
    • 学会等名
      農芸化学会関西支部例会(第483回講演会)
    • 発表場所
      京都大学楽友会館(京都市)
    • 招待講演
  • [学会発表] アミロイドβの毒性オリゴマー認識薬開発への挑戦

    • 著者名/発表者名
      村上一馬
    • 学会等名
      新学術領域研究 天然物ケミカルバイオロジー 地区ミニシンポジウム「化学と生物学の壁と打開策:次世代天然物ケミカルバイオロジー研究の開拓へ」
    • 発表場所
      理化学研究所鈴木梅太郎記念ホール(和光市)
    • 招待講演
  • [学会発表] 伝統生薬チョウトウコウに含まれるアミロイドβ凝集抑制物質

    • 著者名/発表者名
      村上一馬ら
    • 学会等名
      2014年度日本農芸化学会大会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス(川崎市)
  • [図書] Diet and Nutrition in Dementia and Cognitive Decline: Potential role of vitamin C in the prevention of Alzheimer’s disease2014

    • 著者名/発表者名
      Murakami, K. et al.
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      Elsevier
  • [図書] タンパク質の異常凝集とその防御・修復機構に関する研究会報告(VI)2013

    • 著者名/発表者名
      村上一馬ら
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      京都大学原子炉実験所
  • [備考] 京都大学農学研究科食品生物科学専攻生命有機科学分野

    • URL

      http://www.orgchem.kais.kyoto-u.ac.jp/

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公開日: 2015-05-28  

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