研究課題/領域番号 |
25850087
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
片山 茂 信州大学, 農学部, 助教 (30443922)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫寛容 / アレルギー / ポリフェノール / 配糖化 |
研究概要 |
抗原特異的な免疫寛容誘導能を有するポリフェノール配糖体の創製を試みた。ルチンを基質とした糖転移反応により,ヒドロキシ酸10種類(桂皮酸誘導体類,ヒドロキシ安息香酸類など)及びフラボノイド2種類(ミリセチン,カテキン)のルチノース配糖体の合成に成功した。ケルセチン-3-O-グルコシド,またはα-グルコシルルチンを基質とした糖転移反応により,グルコース及びα-グルコシル化ルチノースによる配糖化が可能であることが示された。これに対して,イソフラボン,フラバノン,スチルベノイド,及びクルクミノイドについては合成物を得ることができなかった。続いて,ヒト単核球細胞株THP-1から分化誘導して得た樹状様細胞(THP-1 derived THP-1 cell,TDDC)のTGF-β産生促進作用を指標として,天然ファイトケミカルと上記の配糖体に関してスクリーニング試験を行った。その結果,フェルラ酸及びフェルラ酸配糖体において高いTGF-β産生促進効果が認められた。さらに,OVA感作マウスを用いた動物実験を行い,21日間経口摂取の影響を検討したところ,フェルラ酸とフェルラ酸グルコシドにおいて,アレルギー症状の緩和,血中ヒスタミンの産生抑制,及びパイエル板におけるTreg細胞の増加などの免疫寛容誘導作用が示された。以上の結果から,フェルラ酸およびフェルラ酸配糖体が新規の免疫寛容誘導剤として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であったin vitroスクリーニングをすでに実施しており,高い免疫寛容誘導能を有する化合物として,フェルラ酸を同定している。一方,フェルラ酸の免疫寛容誘導能はルチナーゼを用いたグリコシル化により増強することを明らかにしている。さらに,これらの免疫寛容誘導能については,既に動物実験でその効果を確認している。以上のことから,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今回のスクリーニング試験で見いだしたフェルラ酸グリコシドと抗原タンパク質の複合体の合成に取り組み,得られた複合体の免疫寛容誘導能について,その効果を動物実験により検証する。また,この複合体がさまざまな抗原特異的であるか確認するため,複数の抗原タンパク質を用いてその効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
スクリーニング試験による有効物質の探索が当初想定していたよりもスムーズに完了したため,それに必要と見込んでいた試薬を購入する必要がなくなったため。 平成26年度はフェルラ酸グリコシドと抗原タンパク質の複合体を合成し,この有用性について動物実験により検討する。フェルラ酸グリコシドの単離精製はフラクションコレクターを用いて迅速化を図る。動物実験では,異なる抗原タンパク質を用いた感作マウスを作成し,抗原特異的に免疫寛容が誘導されるか検証する。動物はBalb/cマウスを,抗原タンパク質は市販の精製品を購入する。
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