日本では平成21年に「米穀の新用途への利用の促進に関する法律」が制定されるなど、米の消費拡大に向けて、米粉の利用が促進されてきた。我が国の農作物生産環境を守り、食料自給力を維持・向上させるためには、米粉の用途拡大が急務となっている。 米粉の用途としては、これまでのところ、従来の和菓子や上新粉などに加え、パンやケーキなど、小麦粉の代替物としての利用が主要なものとなっていた。その一方で、油脂を含有する液状乳化系食品への応用はそれほど注目されてこなかった。本研究では、乳化系食品分野への米粉利用の展開を主題とし、米粉分散液を油脂代替成分として利用する、あるいは油脂を乳化するための機能性素材として利用するという2つのアプローチを行った。 米粉を市販の乳化製品に加えることで、油脂代替物としての利用を試みたところ、米粉は主として油相に影響し、長期安定性の向上に関与している可能性が見出された。米粉で乳化物を作成したところ、クリーミングは観察されるものの、油滴の合一や油脂の分離は起こりにくいことが明らかになった。このような傾向は、米粉を高温で加熱処理するほど強く現れることがわかった。 食品素材の乳化特性は、油と水の界面での挙動に依存することが大きいことから、米粉の主成分である澱粉やタンパク質の油滴表面への吸着挙動を基礎的に解析したところ、特にタンパク質の吸着量が多いことが明らかになった。また、酵素を用いて吸着タンパク質の改良を試みたが、我々の実験条件では顕著な効果は認められなかった。今後酵素処理条件を検討する必要があると思われる。 これらの知見は、今後の米粉利用を促進する際に、有用になると考えられる。乳化系食品に米粉を利用する際、どのように品種改良を行うのがよいのかを示すものとなる可能性もある。
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