我々は、青果物中の抗酸化活性を明らかにするためにHPLC分析装置とESR装置を融合したHPLC-ESR装置を開発している。この装置はHPLCにより含有成分の濃度情報を得ることができ、ESRクロマトグラムから溶出成分の抗酸化活性をオンライン分析することが可能である。またカラムをバイパスすることでFI-ESRとなり、抗酸化活性成分のID50値の測定も可能である。この装置を青果物に含まれる抗酸化活性を数値化するために、ID50値および2次反応速度が既知であるコーヒー酸を用いて、ESRクロマトグラムの線形、ピーク強度、面積強度を速度論的に解析した。コーヒー酸のESRクロマトグラムを競争反応に基づく解析法で行うと、濃度およびコーヒー酸のID50値から得られたESRのクロマトグラムのピーク消去率は実測値と一致した。しかしながら、青果物等の混合溶液系では抗酸化活性成分の濃度やID50値が未知であるため、ESRクロマトグラムをガウス線形でシミュレーションをすることにより解析を行った。コーヒー酸を基準物質として、そのID50値とESRクロマトグラフのピーク消去率から、ピークにおけるCA換算濃度を求めた。次に、線幅を最適化してガウス線形としてESRクロマトグラフを再現すると、測定した線形と良い一致が得られた。さらにガウス曲線を積分すると、ESRクロマトグラムに寄与した抗酸化物質の総量をコーヒー換算濃度として数値化できた。この方法を実際の青果物等の水溶性成分の抗酸化活性の評価方法として応用した。ESRクロマトグラムから得られた各成分の抗酸化活性を合計したコーヒー酸換算値とFI-ESRより算出したコーヒー酸換算値が一致した。また、ESRクロマトグラムの全ピークの面積強度に関する各ピークの面積強度の比率をとることで各ピークで溶出する成分の比活性をもとめることが可能となった。
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