ダイオキシン類を検出する従来法であるゲルシフトアッセイにより、32Pラベルしたダイオキシン応答配列(DRE)を用いて動物の肝臓より調製した細胞質画分のアリール炭化水素受容体(AhR)活性化を検出した結果、C57BL/6マウス由来細胞質画分ではダイオキシン応答が見られなかったのに対して、SDラット由来細胞質画分では濃度依存的なAhR活性化を検出できた。C57BL/6マウスAhRは、過去の文献よりダイオキシン応答性が高いことが報告されているため、夾雑物が多い肝臓細胞質画分ではなくタンパク質発現系由来であればダイオキシン応答性が高まることが期待できる。ダイオキシン類の簡易測定法ELISAの改良法として、AhRとそのパートナータンパク質であるARNTをラット肝臓細胞質画分由来ではなく、昆虫細胞を用いて発現させたマウスAhRおよびARNTに変更するため、これらのタンパク質のクローニングを行った。これまでの予備試験結果から、AhRはNiに非特異的に吸着することが示唆されたため、AhRおよびARNTへの標識は標識として汎用性が高いHisではなくFLAGが有効ではないかと考え、最終ベクターをpPolh-FLAG™-2 Transfer Vector (Sigma)と決定し、インサート部分の構築を行った。現在、マウスAhRおよびマウスARNTの両端に制限酵素を付した目的インサートをTAクローニングベクターに挿入し、シークエンス解析を行う段階にあり、未だ昆虫細胞発現系は構築できていない。また、改良ELISA法に使用する抗体については、ゲルシフトアッセイでダイオキシン応答性が確認できたラット肝臓細胞質画分を用いて検討中である。
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