研究実績の概要 |
今年度についてはこれまでに検討していない細菌を対象として、抗生物質耐性とフリーラジカル挙動の関係を調査した。リファンピシン耐性を獲得した大腸菌O157:H7を作成し、これを実験に使用した。リファンピシンを加えたTSA培地を使用して37℃で24時間培養した後、リン酸緩衝液(pH 7.2)に懸濁し、その後リファンピシンを加えた。最終的に、リファンピシンの濃度は25μg/mLとなるように調整した。このようにして作成した菌懸濁液を37℃の環境下で2時間保存した後、メナジオンを適量加えた。さらに、CYPMPO(5 -(2, 2-dimethyl-1, 3-propoxy cyclophosphoryl)-5-methyl-1-pyrroline N-oxide)をスピントラップ剤として添加し、濃度は20 mMとなるように調整した。その後、ESRスペクトルの測定を行った。測定条件については前年度までと同様であり、分光器としてEMX-plus(ブルカーバイオスピン株式会社製)を使用した。大腸菌O157:H7のリファンピシン耐性株は感受性株と比較してピークが高くなる傾向が示唆された。このことから、大腸菌O157:H7に関しても、ESRで得られるピークの強度を利用して抗生物質耐性の有無を識別できる可能性がある。しかしながら、微生物由来の信号は微弱であり、ノイズの影響も無視できないため、今後の更なる精査が必要である。
|