研究課題/領域番号 |
25850099
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研究機関 | 独立行政法人水産大学校 |
研究代表者 |
杉浦 義正 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 講師 (60608107)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低利用食用褐藻類 / フロロタンニン / 抗アレルギー効果 / 抗炎症効果 / 食品機能 |
研究実績の概要 |
1. アレルゲン(卵白タンパク質,OVA)を投与したアレルギーモデルマウスを用いた実験において、フロロタンニン溶液を経口投与した場合は、抗アレルギーならびに抗炎症の方向へ免疫調節されることが分かった。この機序は、従来からよく知られているTh1細胞/Th2細胞の2平衡バランスではなく、Th1とTh2以外にTh17やTreg細胞が関与した4平衡のバランスの改善であることが明らかとなった。さらに、Treg細胞活性化による炎症性のTh2およびTh17細胞の活性化抑制であることも示唆された。(論文の投稿準備中) 2. 褐藻サガラメの脂溶性成分について成分分画を行い、抗アレルギー性をリポキシゲナーゼ活性阻害を指標に有効成分の探索を実施した。その結果、クロロフォルム/ヘキサン混合液(40/60)で溶出し、メタノールに可溶の成分から、1種の有効成分が単離された。その成分は、リポキシゲナーゼ以外にも炎症に関る酵素(ホスホリパーゼA2やシクロオキシゲナーゼ-2、ヒアルロニダーゼ)活性を阻害し、培養細胞のヒスタミン放出を抑制するなど、抗アレルギー性が確認された。 3. 褐藻類のカロチノイドであるフコキサンチン(Fx)の抗アレルギー性について検討した。その結果、炎症モデルマウスにおいては、Fxを炎症部位に塗布した場合でも経口投与しても、抗炎症効果を示すことが分かり、有用な抗アレルギー・抗炎症成分であることが示唆された。また、炎症関連酵素(ホスホリパーゼA2やシクロオキシゲナーゼ-2、ヒアルロニダーゼ)の活性を阻害することが分かり、それが抗炎症の機序の一部であることも考えられた。(論文投稿中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下3点の新規の研究成果取得により、概ね順調な進展と判断した。 1. フロロタンニンによる免疫調節作用は、4種T細胞バランスによるもので、その効果はTreg細胞活性化に起因するという新規知見が得られた。 2. サガラメ脂溶性成分に含まれる抗アレルギー成分の探索では、平成25年度の研究で得られた成分以外に新規の成分が単離された。 3. フロロタンニン以外の褐藻由来機能性成分であるフコキサンチンについて、抗アレルギー・抗炎症効果に関連する新規知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 卵白タンパク質以外のアレルゲン(花粉等)によるアレルギーモデルマウスにて、フロロタンニンの抗アレルギー性を検討する。 2. 平成25年度および26年度に単離された成分の化学構造を解析する。 3. Caco-2細胞を用いたフロロタンニンの透過・吸収実験において、透過液に含まれるフロロタンニンについて、微量成分検出器(電気化学検出器など)で解析する。 4. 培養細胞(RBL細胞)を用いて、フロロタンニンのヒスタミン放出(脱顆粒)抑制の機序を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物(マウス)を用いてフロロタンニンの免疫調節作用の解析を行ったが、全工程を消化できず、ELISAキットや関連機器類の購入を翌年度に繰り越すこととしたため。また、Caco-2細胞を用いた消化・吸収実験も完了したかったため、関連試薬および機器類の購入を翌年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫調節作用の実験、Caco-2細胞を用いた吸収実験ならびにウェスタンブロット(タンパク質測定)関連物品の購入等により、予算を消化する。
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