研究課題/領域番号 |
25850102
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小笠 真由美 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (10646160)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 木部内水分布 / MRI / 低温走査電子顕微鏡(cryo-SEM) / アーティファクト |
研究概要 |
本研究は,降雨局在化による樹木の影響評価に向けた基礎的知見として,乾燥の進行および解消の両側面から樹幹木部の通水阻害の拡大および解消のメカニズムを木部の組織構造学的観点から明らかにすることを目的とした. 平成25年度は,木部のキャビテーションの拡大様式に木部の構造的特徴が与える影響を明らかにすることを目的とし,コンパクトMRIを用いて樹幹木部内水分布を非破壊的に観察するとともに,樹幹を凍結サンプリングし低温走査電子顕微鏡(cryo-SEM)を用いて木部内の水の存否とその空間分布を細胞レベルで解析する予定であった.しかし,当該年度に国際誌にて木部が負圧下にある状態で従来の方法で枝をサンプリングすると本来の木部内水分布が変わる(アーティファクト)可能性があることが報告されたことから,本来の木部内水分布を維持した状態で樹幹をサンプリングする手法を確立する必要性が新たに生じた. そこで,研究内容を一部変更し,ブドウ苗を対象に,木部の負圧緩和のための処理(水切り)を様々な条件で行い,MRIを用いて処理の前後で木部内水分布を確認することで,本来の木部内水分布が維持される処理条件を検討した. その結果,樹幹の水切り処理を,木部内水分布の観察部位からその個体の最大道管長以上離した位置で行うと,目的の部位の木部内水分布を維持した状態で木部の負圧が緩和されることが明らかとなった.この水切り処理条件に基づき,落葉広葉樹3種の実生苗を対象に,木部の負圧を緩和した後に樹幹を凍結サンプリングし,凍結試料でもアーティファクトが回避されているかどうかをcryo-SEM観察により調査した.その結果,木部の広域的観察では,全ての樹種で凍結サンプリング後も本来の木部内水分布が維持されるようであり,より詳細な細胞レベルでの観察結果は解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究課題の採択直後に,先行研究にて従来の実験手法にアーティファクトが含まれる可能性が提起されたものの,その解決策は未だ得られておらず,研究課題の遂行のために実験手法の確立を優先して行う必要性が急遽生じた.当該年度はこれに関する実験・調査を行うことになったが,得られた成果は論文としてすでに取りまとめており,投稿準備がほぼ完了している状態である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的を維持するものの,上述のとおり初年度の研究内容に変更が生じたことから,次年度の研究計画を一部修正し,採択期間内で一定の成果が挙げられることを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品価格の変動によって残額が生じたため. 前年度からの繰越分を含めた直接経費は,消耗品費および旅費として,さらに今年度は特に成果発表(論文の投稿など)に係る費用に充てる予定である.
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