本研究は、ツキノワグマの食性の個体差を解明し、その個体の属性が及ぼす影響を評価することを目的とする。最近の研究により単独性の大型哺乳類にも、群れ性の哺乳類と同じく属性による食性の個体差が存在し、それが生存率や繁殖状況、行動パターンに影響することが示唆されている。しかし、実際のデータによる裏付けがほとんどない。 本研究では、ツキノワグマの長期プロジェクトの中で蓄積された個体情報をもとに、体毛の安定同位体比分析およびリアルタイムに位置情報が入手できるGPS首輪の装着個体を選定し、利用場所の踏査により具体的な食性を連続的に解明・個体間で比較解析することで、ツキノワグマの食性の個体差の実態を解明を試みた。 その結果、ツキノワグマの食性には個体差が認められ、その要因として雌雄や年齢が影響している可能性が示唆された。また、個体差は季節により異なり、夏季は大きく、秋季は小さくなった。これらの要因としては、ツキノワグマの食性が季節によって大きく異なり、特に開きは多くの個体がブナ科の果実に食性を大きく依存するため、その差が小さくなったと考えられる。一方、夏は食物資源が限られ、また繁殖期にもあたり、行動にも個体差が存在するため、結果的に食性の個体差が大きくなったと考えられる。
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