本研究は、ツキノワグマの食性の個体差を解明し、食性に属性(性や齢)や家系が及ぼす影響を評価することを目的とした。調査では栃木県足尾・日光地域で行ってきた学術捕獲によって得られたツキノワグマの体毛の窒素および炭素の安定同位体比を測定し、それらの値から食性の個体差に及ぼす要因を要因を推定した。その結果、ツキノワグマの食性には個体差が存在し、性、齢により食性に違いが見られた。また、季節によって個体差の程度が異なり、食物資源が乏しいと考えられる夏季には個体差が大きくなった。一方、ブナ科堅果を主な食物とする、食物資源の多い秋季には個体差の程度は小さくなった。
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