研究課題/領域番号 |
25850105
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
平山 大輔 三重大学, 教育学部, 准教授 (00448755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 開花結実期間 / 隔年結果 / カシ / 堅果生産 / 生活史戦略 / 摘果 / 二年成 / ブナ科 |
研究概要 |
二年結実性(二年成)カシ類において、開花後1年もの期間を新梢の枝先で休眠状態のまま過ごす幼果の生態学的役割を解明するため、摘果実験の手法を用いて幼果の除去が翌年の新梢伸長に及ぼす影響の調査を開始した。平成25年度は、これらのカシ類の特徴である隔年結果性から、主な調査地である春日山原始林(奈良市)では、アカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシの開花がほとんどみられない年であった。一方、成熟途上の幼果(前年に開花)が多数観察され、堅果の成り年となることが予想できたため、摘果実験は次年度の実施とし、今年度は昆虫による堅果への産卵の調査を重点的に行うこととした。この調査は、摘果実験と並び、二年結実性カシ類の生活史特性の適応的意義を探る本研究の重要なアプローチのひとつである。 春日山原始林とその周辺地域、大阪市立大学理学部附属植物園(大阪府交野市)、三重大学附属演習林(津市)、伊勢神宮周辺地域(三重県伊勢市)を主な調査地とし、ルートセンサス法を用いて、二年結実性カシ類と他のブナ科樹種の堅果に対する昆虫による産卵の有無とその程度を記録した。生育地が日本のごく一部(九州南部や奄美・琉球諸島)に限定されるハナガガシとオキナワウラジロガシを除く20種のブナ科樹種(アカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ、イチイガシ、アラカシ、シラカシ、ウバメガシ、コナラ、ミズナラ、クヌギ、アベマキ、カシワ、ナラガシワ、マテバシイ、シリブカガシ、スダジイ、ツブラジイ、クリ、ブナ、イヌブナ)から計638の調査個体を得て、昆虫による堅果への産卵の有無とその程度について、各個体3回のモニタリングを行った。また、産卵がみられた堅果の一部をサンプリングして持ち帰り、昆虫の種同定のため個別に羽化まで飼育することとした。なお、この調査は平成26年度も継続した後、種間比較等の分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
隔年で繁殖を行う二年結実性カシ類の性質から、摘果実験は平成26年度の実施事項になったが、摘果に適した個体(樹冠の繁殖枝群へのアクセスが容易な個体)の選定は済んでおり、実施に向けて十分な準備ができている。また、その一方で、昆虫による堅果への産卵の調査については、20種から638個体の調査個体が得られ、各個体につき3回のモニタリングを行うことができた。平成26年度も継続して行うことで、種間比較を行うに十分なデータが得られると期待できる。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の観察から、平成26年度は、調査地において二年結実性カシ類のアカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシの大量の開花が見込まれる。4月から5月の雌花の開花直後に、各調査個体の樹冠で、雌花のついた新梢(当年枝)30本の群を4つ設定する。そのうちひとつを摘果(幼果を除去)しない群(対照群)とし、残りの3つは摘果する群(処理群)とする。3つの処理群は、開花直後に摘果する群、開花後の夏季(8月)に摘果する群、冬季(12月)に摘果する群とする。もし開花枝数が予想よりも少ない場合、処理群の数を減らすなどして実験を遂行する。各枝には標識テープをつけて区別する。摘果後、経過を観察し、翌年の春に各枝からの新梢伸長の有無を記録する。これらと並行して、平成25年度から引き続き、昆虫による堅果への産卵の調査を行う。
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