アカガシでは調査地周囲の工事の影響で平成27年度にはデータを得ることができなかった。ウラジロガシとツクバネガシでは、摘果群における新梢伸長率の個体差が大きく、個体によっては摘果群が対照群よりも有意に高い伸長率を示したものの、現時点では摘果が翌年の新梢伸長に重要な効果を持つかどうかについては判断が難しく、さらに検討が必要であることが示唆された。 一方、種子散布前捕食昆虫の一種であるハイイロチョッキリによる被害の程度と、二年結実性ブナ科樹種の繁殖および新梢伸長特性の間には、明瞭な対応関係がみられた。ハイイロチョッキリによる被害はコナラ属で全般的にみられ、特にアカガシ亜属(アカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ)では被害個体の割合が極めて高かった。対照的に、マテバシイ属では全く枝切りはみられず、シイ属でもほぼ全個体で被害はなかった。さらに、アカガシ亜属では切り落とされた枝のほとんどが新梢を伸ばしていなかったのに対し、切り落としのなかったマテバシイ属とシイ属で樹冠の繁殖枝を観察したところ、そのほとんどが新梢を伸ばし、かつ新梢の多くで開花がみられた。以上のことから二年結実性カシ類の隔年結果はハイイロチョッキリの枝切り行動による損失を低減する効果を有する可能性が示唆された。
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