本年度は昨年度に引き続き、針葉樹および広葉樹について通水機能の回復性のメカニズムおよび回復性に影響を与える生理的特性について調べた。 針葉樹では、乾燥による通水機能の損失は仮道管内の水分消失(空洞化)が原因であると考えられてきた。その一方で、壁孔壁の移動による仮道管有縁壁孔の通水抵抗の可逆的な変化が、空洞化を伴わずに通水機能を変化させる可能性も指摘されているが確認には至っていなかった。本研究では中国半乾燥地の自生種を用いて、乾燥の進行に伴った木部通水機能の低下に対して、仮道管の空洞化に加え、壁孔壁の移動による壁孔の通水抵抗増加が与える影響について検討した。その結果、乾燥の進行に伴った通水機能の低下は仮道管の空洞化に加えて、空洞化していない仮道管間の壁孔壁の移動による通水抵抗の増加により生じることが自然張力下で新たに確認された。 広葉樹の通水機能の回復性は、空洞化した道管が再び水で満たされること(再充填)によって起こると考えられているが、種特有のどのような生理的特性が道管の再充填による回復性の種間差に影響するのかは明らかにされていない。本研究では、回復性の異なる落葉広葉樹6種のポット苗を用いて、木部の構造的特性や、乾燥時の樹体の各種生理活性を求め、これらと通水機能の回復性との関係性を評価した。生理活性には、昨年評価した特性に加えて、幹の貯水性についても評価した。その結果、糖含量やその生産や輸送に関わる生理活性が再充填による通水機能の回復性の種間差を決める重要な特性であることが明らかとなった。また、貯水性の高さも影響しており、木部の構造的特性としては、糖の輸送経路となる柔細胞の面積割合ではなく、貯水性に関わる組織の面積割合が重要である可能性が考えられた。
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