研究課題/領域番号 |
25850111
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菱 拓雄 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50423009)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミヤコザサ / カラマツ林 / ミズナラ林 / 窒素循環 |
研究実績の概要 |
本研究は,北海道東部のカラマツ林,ミズナラ林におけるミヤコザサの除去実験を通して下層植生の持つ生態系機能を明らかにし,これが土壌動物に与える影響を明らかにすることにある. 平成26年度は,実験設定から2年が経過した.この間,下層の除去処理は継続的に進めており,大きな問題はなかった.春に実験処理1年後のトビムシ群集,土壌下層からの窒素養分溶脱量,リターフォール,細根量,樹木成長量,土壌呼吸量,PLFAによる土壌微生物の群集特性の計測を行った.また,リターフォールについては2年目のデータまで取得している. 一年間の下層除去によって,いずれの植生,実験処理においても窒素の溶脱は生じていなかった.下層除去処理によって,1,2年目のリターフォール量,葉の窒素濃度はミズナラ林でのみ増加しており,カラマツではこのような傾向は見られなかった.ササの窒素保持量は,ミズナラ林,カラマツ林ともに20%以上が見積もられているが,土壌の窒素生成速度,表層土壌の養分プールにも差がなく,下層植生による養分吸収の喪失は,より深い土壌層への窒素吸着や,葉以外への窒素保持量の増加等が生じているかもしれない.次年度には下層植生の吸収分の窒素がどこに使われているのかをより詳細に調べる予定である. 微生物については菌類とバクテリアの比が処理によって変化していた. トビムシ群集についても解析を行った.ササ除去区の方で群集構造の地点間のばらつきが大きくなる傾向は見られているものの,1年の処理ではまだ植生と処理による一貫した群集の違いは見られていない.微生物の変化がトビムシ群集に影響するのに1年の時間は短いのかもしれない. いずれの項目についても,1年の処理後に計測した下層植生の一貫した効果は得られなかった.3年間の継続調査を続けるが,それ以降の長期的な影響を観測する体制を来年度に築きたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたデータの収集,解析まで予定通り進んでいる. また,研究協力者が本研究に協力してくれているおかげで,予定になかった土壌微生物の活動量や群集機能の変化等も測定することができた. 下層植生の除去は地上部の刈り取りを行っているが,地下茎の影響が排除できていないことが窒素流出などが生じない原因になっているかもしれない.この点から期待通りの結果がでていない可能性もあるため,地下茎の排除処理を試す.
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今後の研究の推進方策 |
当初考えていた仮説にたいして,下層植生の除去効果は短期的に顕著に現れるものではなかった.次年度が最終年度のため,研究期間中までのまとめをしつつ,長期での影響を調べる用意をする.また,下層の除去は地上部に対して行っているが,地下茎の生存率が思いのほか高そうであるため,地下茎の切断をしっかりやり直した実験を本研究を踏まえて進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の前半に集中的な調査観測を行うために,迅速な資金準備が必要と考えたため.
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次年度使用額の使用計画 |
サンプリング用のバイアルや硝子器具購入を4月中に行う.
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