土壌生物群集は高い多様性を持ち、有機物の分解や窒素の無機化といった生態系の基盤となるプロセスにおいて重要な機能を担っている。しかし、種レベルの研究は非常に少なく、種を機能的に分類することができないため、未だ群集動態と生態系プロセスを関連付けることが不可能な状態にある。本研究の目的は、土壌生物の主要な機能形質である食性に着目し、種ごとの食物炭素源を明らかにすることで土壌生物の機能的分類に取り組み、土壌生物の生態系機能の定量につなげることである。従来、落葉由来の炭素を主要な食物源としていると考えられ、分解者として機能分類されてきたトビムシ目のうち、生きている植物の根から供給される浸出物に由来する炭素を食物源とする種を明らかにすることが具体的な目的である。主な実験手法として13CO2トレーサーを用いた同位体ラベリングを用い、根浸出物を標識することで、トビムシによる取り込みを検証した。前年度までに圃場におけるラベリング実験や検証のための野外操作実験を完了し、本年度はこれらのデータ解析と論文投稿を行った。本研究により多くの種が根浸出物を利用していることが明らかとなった。これは従来主に分解者として定義されてきたトビムシが消費者としての性質をもつ可能性を示すものである。また、これまでトビムシの食性における種間差は種の住み場所や形態的特徴から類推されてきたが、これらの研究結果からそれらの指標が食性と無関係であることが示され、今後さらに食性解析を進める重要性が示された。
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