ユーカリ(Eucalyptus camaldulensis)は、強酸性土壌で問題となるアルミニウム過剰害に強い耐性を示す。ユーカリのアルミニウム耐性機構を解明し、応用することで強酸性土壌における植物の生産性向上に貢献できる。我々は、新しいアルミニウム無害化物質として、ユーカリの根から加水分解性タンニンの一種エノテインBを見出している。本研究では、エノテインBの特性を解析し、エノテインBがユーカリの強力なアルミニウム耐性に寄与していることを検証した。 (1)Eucalyptus属3樹種を含む5樹種において、根のエノテインB含有量とアルミニウム耐性を評価し、エノテインB含有量が高い樹種ほど、アルミニウム耐性が高い傾向があることを示した。(2)ユーカリの根細胞液の金属組成を模倣した金属溶液とエノテインBを混合したところ、エノテインBと結合した金属の9割はアルミニウムだった。(3)ユーカリの根細胞液に含まれる濃度と同等のクエン酸とシュウ酸が競合しても、エノテインBはアルミニウムと結合することができた。以上の結果から、根内でエノテインBがアルミニウムと優先的に結合してアルミニウムを無害化することで、ユーカリのアルミニウム耐性に寄与していると考えられた。また、公開されているユーカリのゲノム情報から、加水分解性タンニン生合成の最初の二段階の酵素であるシキミ酸脱水素酵素とUDP-グルコース:没食子酸 グルコース転移酵素の候補遺伝子をそれぞれ4つずつ選抜した。
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