ボールミル処理により水酸化カルシウムを複合した木質バイオマスの炭素化において,ボールミル処理,炭素化温度等の製造条件が,ガス化効率および固体生成物の表面特性に与える影響ついて検討した。 ガス化効率に与える影響として,湿式のボールミル処理の場合は, 1000℃炭素化時において発生する水素,一酸化炭素量が,水酸化カルシウム複合の有無に関わらずボールミル処理により有意に増加し,冷ガス効率も向上したことから気体生成物を回収することによりエネルギーとして有効利用できる可能性が示唆された。 また,水酸化カルシウムをボールミル処理により複合し600℃と1000℃で炭素化して得られたカルシウム複合炭素化物の表面特性を評価した。ボールミル処理のみでは,カルシウム化合物の化学形態変化は見られず,炭素化プロセスにおいて化学形態が変化する結果が得られ,600℃炭素化時はCaCO3,1000℃炭素化時はCaCO3とCaOの形態が検出された。また,複合されたCa量は炭素化温度の上昇により増加した。細孔特性に関しては,600℃,1000℃炭素化においていずれもカルシウム複合によりBET比表面積と全細孔容積が増加し,これは,水酸化カルシウムの賦活効果によるものと考えられた。電子顕微鏡観察の結果から,ボールミル処理により表面が破壊され,カルシウム化合物が全体的に分散している様子が観察された。 作製したカルシウム複合木質バイオマス炭素化物による水中のリン除去性能を評価した。通常の炭素化物にはリン除去効果がほとんどなかったが,カルシウム複合により水中のリン除去効果が大きく増大し,代表的な富栄養化の原因物質であるリンの除去材,あるいは枯渇性資源であるリンの回収材等として利用できる可能性が示唆された。
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