研究課題/領域番号 |
25850123
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
重藤 潤 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (70570852)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 木化 / ペルオキシダーゼ |
研究概要 |
本研究は、植物におけるリグニンの高分子化酵素と考えられる3つの植物ペルオキシダーゼ(AtPrx-2、25、71)のそれぞれの酸化能力、発現時期、発現部位、細胞レベルでのタンパク局在を明らかにすることによって、リグニンの高分子化機構を解明することを目指している。本年度は、AtPrx-2、25、71の酸化能力を明らかにするため、1.組換えタンパクの作製・精製、2.リグニンモデル化合物を用いた活性測定、3.発現・局在解析用の発現ベクターの構築を行い、以下の結果を得た。 1. 組換えタンパクの作製と精製…AtPrx-2、25、71に加え、比較対象として、酸化能が既知であり代表的な植物ペルオキシダーゼの一つであるAtPrx53も同時に作製を試みた。まず植物細胞での組換えタンパクの産生を試みたが、いずれも発現しなかった。次に大腸菌発現系を用いたところ、封入体の形態で産生された。リフォールディング条件の検討を行った結果、各活性型組換えタンパクの産生法を確立できた。また精製法も確立できた。 2. AtPrx-2、25、71の酸化能力…リグニンモデル化合物を基質として用いた活性測定を行ったところ、AtPrx-2、25、71は、既知の大部分のペルオキシダーゼとは異なり、シリンギル化合物酸化能と高分子化合物酸化能を併せ持つことが明らかとなった。 3.遺伝子発現・タンパク局在解析…各ペルオキシダーゼの推定プロモーター領域、cDNAをクローニングした。β-グルクロニダーゼをレポーター遺伝子とする遺伝子発現解析用、およびペルオキシダーゼと緑色蛍光タンパクとの融合タンパクを産生させるタンパク局在解析用の発現用ベクターを構築した。後者を植物培養細胞で発現させたところ、細胞膜もしくは細胞壁における融合タンパク由来の蛍光が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4種の組換えタンパクの作製と精製に成功し、リグニンモデル化合物を用いて各ペルオキシダーゼの酸化能の評価を行ったところ、AtPrx-2、25、71は、AtPrx53とは異なり、リグニン高分子化酵素として矛盾のない酸化能をもつことが示されたため。遺伝子発現・タンパク局在解析用ベクターの構築を終え、タンパクの産生も確認できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は各ペルオキシダーゼの遺伝子発現時期、発現組織、タンパク局在部位の解明に主に取り組み、木化における各ペルオキシダーゼの役割の相違を可視化する。また、リグニンの不均一性の制御と反応特性の異なるペルオキシダーゼの関連性について考察し、新たな研究の展開に繋げたい。
|