本研究は、木部細胞の二次壁堆積過程においてセルロースミクロフィブリルおよび表層微小管の配向を制御する細胞内分子機構の解明を最終目標としている。前年度までに、ポプラにおいて表層微小管の空間配置を制御する因子の探索を行い、その結果、2つの転写因子(#26、#34)が表層微小管の平行性と密度を制御することを明らかにした。そこで、本年度はそれら2つの転写因子について機能解析を行った。 まず、各組織における遺伝子発現パターンの解析から、両遺伝子は二次木部において高発現することを明らかにした。また、各遺伝子を発現制御する上流遺伝子を探索したところ、ポプラのNST/SNDオルソログ(NST/SND;シロイヌナズナにおける木部繊維細胞の二次壁形成のマスター転写因子)が両遺伝子を正に制御することを明らかにした。さらに、#26及び#34が制御する下流の遺伝子群を同定するために、#26遺伝子過剰発現体及び#34遺伝子過剰発現体を用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、#26遺伝子過剰発現体では498遺伝子が発現変動しており、#34遺伝子過剰発現体では238遺伝子が発現変動していた。下流の遺伝子群には微小管結合タンパク質遺伝子が含まれることから、各転写因子の下流で微小管結合タンパク質が機能することにより木部細胞の表層微小管の空間配置が変化する可能性が示唆された。
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