研究課題/領域番号 |
25850126
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
小沼 ルミ 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (90463075)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | MVOC / 木材腐朽菌 / ガスクロマトグラフ質量分析 / プロトン移動反応質量分析 / ヘッドスペース固相マイクロ抽出質量分析計 |
研究概要 |
木材腐朽菌由来の揮発性代謝産物(MVOC)を測定するにあたり、これまでに測定例がほとんどなかったことから、まずは合成培地を用いた木材腐朽菌の培養によってMVOCのサンプリング手法を検討した。本研究では、通常は空気のサンプリングに使用されているガスバック内に、腐朽菌を接種した培地を挿入後、密閉して培養することで、ガスバック内にMVOCを放散させるサンプリング手法を考案した。培養後のガスバック内の空気を対象としてGC-MSで分析したところ、安息香酸メチルなど種々の揮発性物質が検出された。これらの揮発性物質は合成培地のみの対照実験では検出されなかったことから、本研究で行ったサンプリングおよび分析手法によって、培地での生育に伴い放散される腐朽菌由来のMVOCが測定可能になったと考えられた。また、MVOCの分析手法として、加熱脱着装置付きガスクロマトグラフ質量分析装置(加熱脱着GC-MS)、ヘッドスペース固相マイクロ抽出質量分析計(HS-SPME-GC-MS)およびプロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)の3種類を検討した。その結果、加熱脱着GC-MS及びHS-SPME-GC-MSではMVOCの成分を同定することができ、同定した成分ごとに定量的な分析が可能であった。一方、PTR-MSは、同一質量数の複数物質を区別して定量することができないという欠点を持つ。本研究ではカラム分離機能を持つGC-MSを使用した精密分析とPTR-MSを合わせて測定することによって主要なMVOC成分の放散挙動を経時的に捉えることが可能であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では木材腐朽菌が放散する揮発性代謝産物(MVOC)のサンプリングおよび分析手法を確立すること。また、その手法を用いて腐朽菌の生育段階とMVOCの関係を明らかにし、MVOCを使用した腐朽診断につなげることを目的とした。 上記の研究目的に対して、平成25年度はMVOCのサンプリング手法およびMVOC分析手法の確立を目指した。まず、担子菌由来のMVOCを測定した例はほとんどないことから、通常は空気のサンプリングに使用されているガスバックを培養器として利用するサンプリング手法を考案した。培養器としたガスバック内の空気を対象として加熱脱着GC-MSで分析したところ、安息香酸メチルなど種々の揮発性物質が検出された。これらの揮発性物質は合成培地のみでは検出されなかったことから、本研究で行ったサンプリングおよび分析手法によって、培地での生育に伴い放散される腐朽菌由来のMVOCが測定可能になったと考えられた。 さらに、平成25年度は腐朽菌の成長に伴うMVOCの経時変化を捉えることを目指した。そこで、リアルタイムでの揮発性成分の分析が可能なプロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)での測定を試みた。PTR-MSは、同一質量数の複数物質を区別して定量することができないという特徴を持つが、カラム分離機能を持つGC-MSを使用した精密分析と合わせて測定することによって主なMVOC成分の放散挙動を経時的に捉えることができた。 以上のことから、本研究の目的に対して現在までの達成度をおおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、腐朽菌の生育段階とMVOCの関係を明らかにするために、複数の腐朽菌種を用いて木材腐朽させた材由来の揮発性物質の経時変化をモニタリングするといった研究を進めていく計画である。さらに、担子菌の代謝経路から同定されたMVOCの放散メカニズムについて解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
急遽必要な試薬や器具の購入を迅速に行うことを目的に、経費を全額使用することを控えたため、差引額約10万円が生じた。 来年度は腐朽菌の生育段階とMVOCの関係を明らかにするために、複数の腐朽菌種を用いて木材腐朽させた材由来の揮発性物質の経時変化をモニタリングするといった研究を進めていく計画である。そのため、複数菌種の腐朽菌株の購入を含め、試薬や器具類の購入に経費を使用する。また、今年度は研究過程で得られた成果をカナダで開催される国際会議で発表予定のために旅費を使用する計画である。
|