研究課題/領域番号 |
25850128
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
加納 光樹 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 准教授 (00527723)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 塩性湿地 / クリーク / 魚類 / エビ類 / 環境修復 |
研究実績の概要 |
塩性湿地(汽水域にあるヨシ等の抽水植物からなる湿地)に発達するクリークは、絶滅危惧種や水産有用種を含む様々な生物の生息場として機能すると考えられているが、日本国内では実際にクリーク内での魚類やエビ類の生息状況を詳細に調べた研究は皆無である。そこで本課題では、様々な開発の影響を受けてきた東京湾岸をモデル調査地とし、局所的に残存する天然塩性湿地クリークで環境特性と生物生息状況との関係を調べた後に、湾岸埋立地に実験用クリークを造成し生物群集を回復させる野外実験を行う。2014年度は、湾岸埋立地に造成した実験用クリークにおいて、次の2つの調査項目を実施した。 1. 水辺植生の有無への魚類・無脊椎動物の反応: ヨシ等の水辺植生を除去したクリークと除去しないクリークで、一定期間後に魚類・無脊椎動物の種組成や個体数がどのように変化するかを調べた。水辺植生を除去したクリークの方が除去しないクリークよりも魚類・底生無脊椎動物の種数が多く、水産有用種や絶滅危惧種も頻繁に認められた。一方、水辺植生を除去しないクリークでは、低酸素耐性をもつアベハゼ以外はほとんど出現しなかった。これは、そのような場所ではヨシ等により日光が遮られ、植物プランクトンの光合成が抑制され酸素発生量が減るうえ、底泥に堆積した有機物の分解で大量の酸素が消費され、水中の酸素濃度が低くなるためと考えられた。 2. 造成クリークの生物群集構造の経時的変化の追跡: 造成したクリークで5月、7月、9月、12月に環境調査と観察・採集を継続的に行い、生物群集構造が経時的にどのように変遷するのかを調べた。その結果、造成後わずか3か月で、多くの魚類・無脊椎動物が加入することが明らかとなった。また、天然塩性湿地クリークの魚類・エビ類群集と同様に、長期的に滞在する種と季節的に来遊する種がいることもわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた野外調査は、計画通りに終えることができた。一方で、当初は、2014年度に実施した野外実験の環境データの解析と生物サンプル(魚類・エビ類・小型底生無脊椎動物)の処理・解析を当年度内に終える予定であったが、小型底生無脊椎動物については当初予定よりも分別作業に時間がかかり、処理を終えることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予定より、野外実験で得られた生物サンプルの処理が遅れているが、今後、一定の時間と労力を割くことで、遅れを取り戻すことが可能である。今後の野外調査では、すでに造成してある実験用クリークで、環境条件(塩分、溶存酸素量、植生など)と魚類・エビ類の種数や個体数、種組成、体サイズがどのように変化するのかに関するモニタリングを継続し、湾岸埋立地へのクリーク造成の効果を検証していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた当該年度の生物サンプルの処理にやや遅れが生じているため、それに関係する経費(物品費と旅費、人件費・謝金、その他)の実支出がなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該年度の生物サンプルの処理は、2015年度の夏頃までを目途に終了する予定であり、それまでに経費(物品費と旅費、人件費・謝金、その他)の繰り越し分も使用する予定である。
|