塩性湿地(汽水域にあるヨシ等の抽水植物からなる湿地)に発達するクリークは、絶滅危惧種や水産有用種を含む様々な生物の生息場として機能すると考えられているが、日本国内では実際にクリーク内での魚類やエビ類の生息状況を詳細に調べた研究は皆無である。そこで本課題では、様々な開発の影響を受けてきた東京湾岸をモデル調査地とし、局所的に残存する天然塩性湿地クリークで環境特性と生物生息状況との関係を調べた後に、湾岸埋立地に実験用クリークを造成し生物群集を回復させる野外実験を行う。 平成26年3月に造成したクリークの生物群集構造が造成後2年目に入り経時的にどのように変遷するのかを明らかにするため、平成27年も5月、7月、9月、12月に環境調査と生物の観察・採集を実施した。その結果、2年目に入っても、造成クリークの水温や塩分、溶存酸素量といった水質環境や底質の粒度組成には大きな変化は認められなかった。また、1年目と同様に多くの魚類・無脊椎動物の生息が確認され、各種の季節的な出現パターンにも1年目と2年目で大きな差異は認められなかった。ただし、水の流れが停滞しやすいクリークでは泥が堆積し水深が徐々に浅くなる傾向が認められたため、本研究で造成したようなクリークの構造を本実験期間よりも長い期間にわたって維持するためには、潮汐作用や上流からの淡水供給等を利用してクリーク内の流れを保持し堆積作用を弱めること、あるいは、定期的に掘削作業を実施し堆積物を取り除く等の管理を行うことも必要と考えられた。
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