研究課題/領域番号 |
25850129
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 光秀 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60466810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物プランクトン / 混合栄養 / フローサイトメトリー / 蛍光プローブ / 同位体標識 / 南太平洋 |
研究概要 |
白鳳丸KH-13-7次航海に乗船し、蛍光標識細菌および現場群集を同位体標識した餌を用いて、摂餌実験を行った。前者のサンプルはすでに解析を終え、南太平洋亜熱帯域において、ナノサイズの鞭毛藻のうち、6~8%が摂餌能をもつことが明らかになった。しかし、その割合の空間的な変動は明確ではなかった。同位体標識実験のサンプルはフィルターとして保存しており、来年度以降解析を進める予定である。 食胞を染色する蛍光プローブLysoTracker Greenを用いて、フローサイトメトリーにより植物プランクトン群集の摂餌能を評価する条件の最適化を試みた。研究室において維持培養している亜寒帯外洋性クリプト藻の株を用い検討したところ、プローブ濃度10 μM、染色時間10分で染色群集の分解能が高く、かつ効率的であることが明らかになった。さらに、窒素欠乏、リン欠乏、および窒素リン充足下で同じ株を培養し、LysoTracker蛍光強度をモニタリングしたところ、栄養塩条件および増殖段階に関わらず全生細胞の80~100%がプローブにより染色されることが明らかになった。染色される細胞の割合は対数増殖開始直後にやや低下したが、その後は高く維持された。一方、細胞あたりの蛍光強度は対数増殖開始とともに低下し、対数増殖後期に有意に増加した。これはリン制限、窒素制限に共通して見られた。これらのことより、この外洋性クリプト藻は培養下では常に食胞を維持しているものの、栄養塩制限下で摂餌能を高めていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白鳳丸KH-13-7次航海で予定していた実験をすべて遂行することができた。同位体標識サンプルについては、まだ解析を行っていないが、これも近々行う予定であり、ほぼ計画通りに進行している。これに加えて、食胞染色という手法を取り入れることによって、現場での固定や濾過を必要としない摂餌能の評価への道が開けた。これは研究開始時には予期しなかった成果であり、当初の研究の目的の主柱である同位体標識法を補強する手法として極めて有力である。 以上より、当初の初年度の計画はほぼ履行されており、研究は順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
同位体標識餌生物を用いた培養実験のサンプルを二次イオン質量分析器で解析を進める。また、白鳳丸KH-14-3次航海において北半球においても同様の実験を行う。蛍光標識細菌法も並行して行うことによって、新たな手法の有効性を検討する。また、平成25年度における実験においては、餌に用いた細菌サイズがやや大きく、摂餌能を過小評価する可能性が考えられたため、平成26年度ではより細胞の小さい細菌株を入手し、蛍光標識する予定である。 LysoTrackerを用いた摂餌能の評価を培養株を用いて進めるとともに、KH-14-3次航海でも現場での適用が可能かどうかを検討する。適用する培養株をプラシノ藻やハプト藻などに拡大するとともに、摂餌能を発現する条件として夾雑する細菌の密度や光強度などにも注目し、これらの条件を変えた培養を行う。 秋以降はサンプルの解析を進めるとともに、成果を学会発表や論文の形で積極的に公表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
KH-13-7次航海前に行う予定であった一部サンプルの二次イオン質量分析が、機械の予約の日程が合わず、行えなかった。このサンプルの解析は平成26年度に行う予定である。 今年度分も合わせ、前半数回、後半20回程度の二次イオン質量分析計の利用を見込む。また、夏の航海に向けてフィルター類、試薬、添加用同位体、ろ過器などの購入を見込んでいる。これらに加え、成果を日本海洋学会や日本プランクトン学会、陸水海洋学会などで発表するにあたり旅費を必要とするほか、論文作成にかかわるソフトウェアや英文校閲代、論文投稿料などを見込んでいる。
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