研究実績の概要 |
本研究では海産魚種苗生産において初期餌料として用いられるワムシの培養を自動で行うための装置開発を行うとともに、ワムシとその次段階で供給されるアルテミア幼生の自動供給を行うための基礎的研究を行った。最初にワムシの培養条件と2次元動画解析で数値化された行動との関係性を把握し、環境水の状況や培養状態によってワムシの遊泳速度等が変化し、いくつかの項目で高い相関性を示すことが分かった。このことから、培養の状態を行動撮影および解析によって数値化でき、培養技術に応用できることが示唆された。次に本2次元動画解析装置を基にしてワムシの自動培養装置を開発した。、本装置はワムシの計数、給餌、換水、回収を自動で行う装置であり、この装置を用い、毎日1,000個体/mLのワムシを残す設定で間引き培養を行った結果、手動で培養した際と同様の培養結果が得られた。この結果を基に手動で管理する際に行う2回給餌を、6回給餌に増やしたり、高濃度酸素を供給する自動培養実験を行ったが、給餌回数が多いと水質の悪化を招くことが分かり、高濃度酸素の効果も見られなかった。そこで本年度では培養水のpHを2回/日の割合で6にまで低下させて同様の培養を行い、ワムシの残存個体数を1,500および2,000mlとして培養実験を行ったところ、回収成績を向上させることができた。 また、海産魚種苗生産水槽内の餌料生物の密度の把握を行い、その密度に応じて餌料生物を供給する装置を開発するため、2次元動画解析装置によるワムシおよびアルテミアの計数装置を開発した。この装置では遊泳している餌料生物のみを検出・計数し、ワムシおよびアルテミアが混在していてもそれぞれの大きさの違いで解析を行い、自動計数を行うことができた。この装置と連動して生物餌料の濃縮および供給を行うシステムに関しては一部完成したが、実際の海産魚への給餌試験は未達に終わっている。
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