研究課題/領域番号 |
25850138
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60531043)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオロギング / 行動生態 / 魚類 |
研究概要 |
平成25年5月、バハマの周辺海域においてヨゴレというサメの一種の生態調査を実施した。サメはエサでおびき寄せて釣り上げ、ボートに横付けしたのちに、記録計、ビデオカメラ、電波発信器などを組み込んだパッケージを背びれに取り付け、放流した。パッケージはタイマーで三日後に切り離され、水面に浮かぶ仕掛けになっていた。3匹のサメに取り付けたパッケージのうち、一匹からは予定通り回収することができたが、残りの二匹からは機器の不具合があり、回収することができなかった。 同年7月、パルミラ環礁にてツマグロ、オジロメグロザメという二種のサメの生態調査を実施した。実験の手順はヨゴレと同様であった。予測外のトラブルのために回収できなかった記録計もあったが、おしなべて実験はうまくいき、ツマグロ4匹、オグロメジロザメ4匹、合計8匹分の行動データを集めることができた。 そのようにして集めたデータに、文献から収集したデータも合わせ、内温性をもつ魚類が速く泳ぐかどうかを検討した。硬骨魚類29種、軟骨魚類16種、合わせて45種の魚類の遊泳速度のデータを使い、体の大きさや系統関係の違いを反映させる統計手法を用いて比較した。その結果、内温性をもつ魚類は同じ大きさの外温性の魚類に比べて、3倍速く泳ぐという結果が得られた。これは魚類における内温性が運動能力と直接リンクしていることを示す、重要な結果である。 また、それぞれの魚種について、基礎代謝量と遊泳のための代謝量を見積もり、単位距離を進むのに使うエネルギー量を計算した。そうして得られた推定値を、体の大きさや系統関係の違いを反映させる統計手法を用いて比較した。その結果、内温性をもつ魚類は内温性をもつ魚類は同じ大きさの外温性の魚類に比べて、エネルギー効率が悪いという結果が得られた。これは内温性の適応的な意義が、エネルギー効率ではないことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定外のトラブルにより、サメに取り付けた記録計が回収できなかったこともあったが、それでもデータは順調に集まっている。また、内温性をもつ魚類とそうでない魚類とを比較検討することを目指しているが、統計手法上の様々な難しさが少しずつ克服され、解析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
従来の予定通りに研究を推進していく。動物に取り付ける記録計を使って、サメの行動データを収集していく。いっぽうで、それらのデータを使って、内温性をもつ種ともたない種にどのような差が見られるのか、比較検討を進めていく。一流の国際学術誌を目指せるだけの結果は、既に得られているので、早いうちに結果を論文にまとめ、投稿したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
円相場の変動によって、海外に支払った額が多少変動したため。 動物の体から記録計を切り離すための電子機器を購入する。
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