クドアのEST解析ならびにトランスクリプトーム解析により、新規遺伝子情報を取得した。このうち2つについて分子系統解析を行ったところ、伸長因子1αは糞線虫の一種と、熱ショックタンパク質83はウズムシ属の一種と最も近縁であった。1×10の7乗個の胞子を精製後、超音波で破砕し、19種類の酵素活性の有無を検討した。その結果、ロイシンアリルアミダーゼ、酸性フォスファターゼおよびナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼの3酵素について陽性反応が認められた。 クドアに対するモノクローナル抗体作製のため、クドア胞子懸濁液をアジュバントと混合し、マウスに免疫後、リンパ球を採取し、ミエローマ細胞と融合しハイブリドーマを得た。クドア感染魚の凍結切片を用いた免疫組織化学法によるスクリーニングにより、クドアに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを2株得た。これらの抗体はクドアのシスト内に存在するタンパク質あるいはシストから分泌されているタンパク質を認識した。また、分泌性のタンパク質を認識するモノクローナル抗体による免疫共沈降により結合タンパク質を得た。 クドア株間での遺伝子型の比較を行うために約2000塩基対のITS領域の遺伝子配列を解析したが、マルチコピー遺伝子のため均一な配列を得ることができず株間の比較を行うには至らなかった。一方、国内外の株におけるクドアのミトコンドリア様DNAの1932塩基対の遺伝子配列を解析した結果、国内株および海外株にそれぞれ特徴的な遺伝子配列が認められた。 この変異領域を利用したPCR-制限酵素断片長多型(RFLP)解析により、クドアを4つの遺伝子型に識別することが可能となった。32検体の遺伝子型の解析から、国内には全ての遺伝子型が認められた一方で、海外株は単一の遺伝子型となった。また国内においては、地域的に遺伝子型が偏る傾向が認められた。
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