研究実績の概要 |
ウナギ精子を遺伝的に不活性化する紫外線の照射条件を明らかにするため、種々の紫外線照射量(100~10,000 erg/mm2)で処理した時の精子の運動精子率、およびそれらの精子を用いて人工授精した時のふ化率ならびにふ化仔魚の倍数性について調べた。その結果、1,400~2,800 erg/mm2の範囲が雌性発生半数体を誘起するための最適な紫外線照射量であることが明らかとなった。この条件を基に、紫外線照射精子(以下、UV精子)で受精後に、第二極体放出阻止による母親ゲノムの倍加に適した低温処理条件について検討したところ、「受精後3分に、水温0℃の海水に、5~15分間浸漬」という条件が適していることが明らかとなった。さらに、第一卵割阻止によるゲノム倍加を可能にする高圧処理条件について検討したところ、「受精後40~45分に、650~750kgf/cm2の圧力条件で、4分間」という条件によりゲノムを倍加したふ化仔魚の作出が可能であった。上記の実験で得られた条件を基に、UV精子による受精と受精後の低温処理による第二極体放出型および第一卵割阻止型の雌性発生二倍体の誘起を試みた後、得られたふ化仔魚についてフローサイトメトリー分析およびマクロサテライトマーカーによるマーカー型より、目的とするタイプの雌性発生二倍体誘起が成功していることを確認した。本研究により、ニホンウナギにおいてクローン系統作出を可能にする技術基盤が整備されたことにより、短期間に優良形質の遺伝的固定が可能となった。また、完全ホモ接合個体(ダブルハプロイド)をゲノム解析等のバイオリソースとして利用することも可能となった。
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