研究課題/領域番号 |
25850144
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 県立広島大学, 生命環境学部, 助教 (30533400)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テトロドトキシン / 消化管吸収 / Caco-2細胞 |
研究概要 |
ヒト大腸癌由来細胞のCaco-2細胞を用いた消化管上皮細胞単層膜による経口吸収性評価系を立ちあげ,我が国において最も致死率が高い食中毒原因物質であるフグ毒テトロドトキシン(TTX)のヒト消化管吸収過程を解析した。即ち,Caco-2細胞を24ウェルセルカルチャーインサートで培養して細胞単層膜を調製し,単層膜の消化管表面側にMES緩衝液(pH6.0)で調製した50 µM TTX溶液(pH6.0)を加え,血管側ウェルにHEPES緩衝液(pH7.4)を加え,細胞単層膜を境界にpH勾配が形成された状態(pH6.0/pH7.4)でTTX膜透過量を経時的に測定した(n = 2)。インキュベート開始5分後には血管側ウェル緩衝液中に5.0 pmol/cm2のTTXが検出され,20分後には37.7 pmol/cm2となった。TTX量は経時的に増加し,インキュベート開始60分後には85.6 pmol/cm2のTTXが検出された。一方,消化管表面側にHEPES緩衝液(pH7.4)で調製した50 µM TTX溶液(pH7.4)を加え,血管側ウェルにもHEPES緩衝液(pH7.4)を加えてpH勾配がない状態(pH7.4/pH7.4)でTTX膜透過量を経時的に測定(n = 1)すると,インキュベート開始5分後には血管側の緩衝液中に0.6 pmol/cm2のTTXが検出され,20分後には10.8 pmol/cm2となった。その後,TTX量はインキュベート開始60分後には74.3 pmol/cm2となった。TTX透過量は,いずれの時間においてもpH勾配がある状態の値が大きいことから,TTXの輸送駆動力にはpH勾配が関与している可能性が考えられたが,実験回数が少ないため,現段階では断定できない。しかしながら,本評価系がTTXのヒト消化管吸収過程の解析に利用できることがわかったので,今後はTTXの輸送形式について詳細な検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の開始年度である本年度は,実験環境の整備および実験系の立ち上げと実験方法の確認が主な計画であったため,計画立案時の目標を概ね達成したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に立ち上げたCaco-2細胞の実験系を用いて,研究計画通りに実験を行い,ヒト消化管におけるフグ毒テトロドトキシンの吸収メカニズムを詳細に調べる予定である。また,各種細胞膜輸送担体(トランスポーター)発現細胞や細胞膜ベシクル等を利用し,テトロドトキシンの吸収または排泄に関わるトランスポーターをスクリーニングする作業にとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は,ほぼ計画通りに使用されたが,旅費として計上した予算に余剰が発生したため,次年度使用額が生じた。 次年度使用額は,継続するCaco-2細胞単層膜実験系によるフグ毒テトロドトキシンの消化管吸収特性評価ならびに翌年度から開始する各種トランスポーター発現細胞や細胞膜ベシクル等を利用したテトロドトキシンの吸収または排泄に関わるトランスポーターをスクリーニングする作業のための物品費に充当する予定である。
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