研究課題
若手研究(B)
海洋生物の炭酸カルシウム形成機構は多くの研究にもかかわらず不明な部分が多い.本研究では,我々が海洋細菌の培地中にみられる炭酸カルシウム顆粒の形成機構の研究より得られたポリアミンが二酸化炭素と高い親和性を有するという知見から,「ポリアミンは海洋生物の炭酸カルシウム形成に関与する」との新しい仮説もと,これを実証するため,1) 炭酸カルシウム形成とポリアミン産生量の関係,2) ポリアミン生合成阻害による炭酸カルシウム形成への影響の評価,3) ポリアミンを用いた炭酸カルシウム形成反応を阻害する物質の海洋生物の骨格形成に与える影響の評価を主な柱として研究を行うものである.平成25年度は、海洋細菌に加えて、円石藻およびコユビミドリイシの幼生を用いた炭酸カルシウム形成の観察・評価法を確立した.特にコユビミドリイシでは、サンゴの稚ポリプの初期骨格形成を倒立偏光顕微鏡で観察し、その石灰化面積から骨格形成の割合を比較することが出来た.そこでポリアミンを用いた炭酸カルシウム形成反応を阻害する物質を円石藻やコユビミドリイシの骨格形成に与える影響を調べた.また,代表的なポリアミンであるプトレシンの生合成を担うオルニチン脱炭酸酵素の阻害剤であるDifluoromethylornithine (DFMO)を生物実験に必要なスケールで化学合成することができた。今後この阻害剤を海洋細菌,円石藻およびミドリイシプラヌラ幼生培養液に添加,培養後観察し,炭酸カルシウム形成への影響を評価するものとする.
2: おおむね順調に進展している
円石藻やコユビミドリイシの骨格形成の観察法を確立し、ポリアミンを用いた炭酸カルシウム形成反応を阻害する物質がこれらの生物の骨格形成を阻害することを明らかにすることが出来た。また、ポリアミンの生合成阻害剤を化学合成することが出来た。
今後は、ポリアミン生合成阻害剤に加えて、ポリアミン輸送体阻害剤を化学合成し、海洋細菌,円石藻およびミドリイシプラヌラ幼生培養液に添加,培養後観察し,炭酸カルシウム形成への影響を評価するものとする.
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Marine Biotechnology
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10.1007/s10126-014-9566-z