研究課題/領域番号 |
25850147
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
馬久地 みゆき 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究員 (40594007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マガキ / グリコーゲン / 2枚貝 / 生理学 |
研究実績の概要 |
マガキは重要な養殖対象種であり、我が国の海面養殖の10%以上を占めている。古くから養殖が盛んに行われてきたが、種苗生産や育成管理においては多くの問題が残されている。とりわけ夏の高水温や産卵に伴い生理活性が低下し、これらが起因して起こる大量斃死は大きな問題である。マガキは10月より出荷が開始されるが、近年、海水温の上昇により、産卵期間が延び、出荷初期時に未放出の配偶子を大量に保持した個体やグリコーゲン蓄積が間に合わず身入りが不十分な水ガキなど低品質な個体が見受けられる。このような低品質なマガキは産業上深刻な問題である。本研究課題ではマガキの出荷に必要不可欠なグリコーゲン蓄積に関する遺伝子の動態を明らかにするため、次世代シーケンサーを用いて中腸腺および生殖腺を含む周辺組織に発現する遺伝子を網羅的に解析した。グリコーゲン蓄積性には個体差があり、特に出荷初期にグリコーゲン蓄積が良い個体は優良個体とされる。グリコーゲン蓄積性の原因遺伝子を特定するため、グリコーゲン蓄積性が高い群と蓄積性の低い群の遺伝子の発現を比較した。グリコーゲン蓄積性の高い個体と低い個体を組織学的手法および生化学的手法を用いて選別した。これらの群よりRNAを抽出し、逆転写によりcDNAライブラリーを作製した。次世代シーケンサーにより作製したライブラリー配列を解読し、得られたリードを全ゲノム配列より予測された遺伝子領域にマッピングし、各遺伝子の発現量を算出した。グリコーゲン蓄積群に高く発現している遺伝子は全体の1割であった。また、グリコーゲン蓄積群で高く発現している遺伝子に関してパスウェイ解析を行った結果、グリコーゲン蓄積はインスリンシグナル伝達経路との関連性が高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マガキのグリコーゲン蓄積機構を解明するために、次世代シーケンサーを用いて網羅的に遺伝子の発現解析を行った。本年度はグリコーゲン蓄積性の個体差に着目し、グリコーゲン蓄積の高い個体と低い個体の比較解析を行った。比較解析より得られた結果を用いて、さらにパスウェイ解析を行ったところ、グリコーゲン蓄積には糖代謝の中枢となるインスリンのシグナル伝達経路が関わることが判った。グリコーゲン蓄積に関与する遺伝子の選別ができ、研究は順調に進んでいると考えられる。最終目標に向けて着実に成果が得られていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
マガキのグリコーゲン蓄積を制御する上流部の解析により、グリコーゲン蓄積には糖代謝を制御するインスリン経路の関与が示唆された。今後はインスリンシグナル経路のどの遺伝子がグリコーゲン蓄積の鍵となっているのか、定量PCR法などを用いて解析する。さらに遺伝子が特定された後に、グリコーゲン蓄積を直接制御する遺伝子かどうか機能解析を行い、マガキのグリコーゲン蓄積機構の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入や旅費について、節約に努めたため、予定購入金額より実支出額が下回った
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次年度使用額の使用計画 |
H27年8月までに、遺伝子実験関連消耗品として使用する。
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