研究課題/領域番号 |
25850156
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中嶋 晋作 明治大学, 農学部, 講師 (00569494)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農地集積 / 農地市場 / 政策評価 / 農地・水・環境保全向上対策 / 空間計量経済学 / GIS |
研究概要 |
25年度は、農地・水・環境保全向上対策(以下,向上対策)の地域農業への影響評価について分析を行った。分析の対象地域は、向上対策の先進事例である山形県である。分析は、以下の手順で行った。 (1)まず、向上対策の効果としては、耕作放棄地の解消、農道・水路の改修などが考えられるが、クリティカルなインパクトとして如何なるものが考えられるか、農家や関係機関へのヒアリングから把握した。 (2)次に、GIS(地理情報システム)を用いてデータの整理を行い、空間計量経済学(Spatial Econometrics)の手法を用いて、如何なる地域で向上対策に取り組んでいるのかを可視化、定量化した。 (3)最後に、(1)で考慮したインパクト指標を対象に、向上対策の地域農業への影響を明らかにした。推定に用いるデータは、2005年、2010年の農業センサス集落カード(パネルデータ)である。インパクトの推定に際しては、近年定量的な政策評価(インパクト評価、プロジェクト評価)手法として注目されている「差の差(Difference in Differences: DID)推定」を用い、地理的加重回帰分析(Geographical Weighted Regression)の手法を援用した。これにより、観測対象集落全体の平均的なインパクトだけでなく、既存研究で考慮されてこなかった、地域ごとのインパクトの大きさも推定することが可能となった。 推定の結果、向上対策は、農地や農業用用排水路、河川といった地域資源の管理にプラスの影響を及ぼしていること、ただし、これらの効果の発現には地域性があり、庄内地方では大きな効果が得られている一方、置賜地方・村山地方といった山形県南部では十分な効果を得られていないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究課題である農地・水・環境保全向上対策の地域農業への影響評価に関しては、その成果を農村計画学会において報告することができた。ただし、学会の発表はしたものの、まだ学術雑誌に投稿していないため、平成26年度中に論文投稿する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究課題の1つ目は、農業基盤整備事業(特に、国営かん排事業)にともなう農地集積の効果を計量経済学的に分析することである。分析の手順は、以下の通りである。まず、農家や関係機関へのヒアリングから、農業基盤整備事業の効果を特定する。次に、計量経済分析を行うため、農林水産省「農業基盤情報解析調査」と農業センサス集落カードの集落属性情報を組み合わせて、リレーショナル・データベースを構築する。計量経済分析は、農業基盤整備事業の内生性を考慮して、PSM(Propensity Score Matching)推定を用いる。 2つ目の研究課題は、農家のイエ意識、ムラ意識の世代間比較を行うことである。これまで、農地集積の制約要因として、イエ規範、ムラ規範の存在が指摘されてきた。農村社会において、農地はイエを象徴したり、ムラのなかでの社会的序列を規定したりする象徴財・政治財であり、これらの規範は、農地の供給を制約し、農地集積を阻害する可能性がある。以上の点を踏まえ、長野県飯山市の中山間農業地域に位置するある地区を対象に、イエ意識、ムラ意識の世代間比較を行い、農村社会においてどの程度これらの規範が健在なのか明らかにする。
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