農商工連携による新商品開発に着目し,取組みの中核となる主体が連携により得られる経済的メリット,および連携グループ全体で発揮可能な経済的パフォーマンスの程度を数値化して評価するための,新たな評価法を策定した。評価法の策定にあたっては、ネットワーク分析、遺伝的アルゴリズム、ゲーム理論(繰り返し囚人のジレンマ・シミュレーション)を参考にした。 まず,中核主体が農・商・工と連携したことによって得られる商品価格増や売上増を,プレミアムと定義した。農業と連携することによって得られる原料プレミアムは,知名度の高いブランド農産物を活用した場合の方が大きくなることを明らかにした。販売業者と連携することによって得られる販売プレミアムは,販売先が増加するケースでは大きくなる。一次加工業者との連携によって得られる一次加工プレミアムについては,常に大きな値となった。一次加工プレミアムが大きな値となるのは,一次加工により通年で商品加工ができるようになるため,そして青果の状態に比べて複次加工に利用しやすい形態になるためであると考えられる。 評価法では,農商工連携の経済的パフォーマンスを総合利得・事業参加者平均利得の数値から判断する。プレミアムをもとに,グループ全体の総合利得と事業参加者1件あたりの事業参加者平均利得を求める方法を考案した。既存の連携関係で十分な売上が上がっていない場合は,本評価法を用いることにより,取組みの問題点や改善策を提示できる。さらに,既存の連携グループに新たな事業参加者が加わった場合や,一部の事業参加者が離脱した場合の経済的パフォーマンスを予測することができる。 事例をもとに策定した評価法の有効性を検証したところ、事例の評価結果と実際の売上の間には強い相関が見られた。利得と売上の間にはベキ乗近似の関係があり,利得の数値が大きければ大きいほど売上が増加することを明らかにした。
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