2016年度は地域A(実践支援、社会実験)と地域B(先進事例の分析)において以下の通り、調査と実践支援を実施した。 1.地域A(群馬県みなかみ町、長野県富士見町) 両町において、内発的農地保全の実現に向けた有志組織の設立、既存集落内組織や行政との連携による組織体制づくりを支援した。また、その過程では、アンケート調査やネットワー分析を用いて、組織間関係を定性・定量的双方の側面から分析した成果を適宜示しながら、関係者(役場や農家など)の意思決定支援を図った。一方、本研究の大目的である内発的農地保全の支援ツールに関しては、群馬県みなかみ町「たくみの里」を対象にWebGISの構築を試みた。具体的には、これまでの研究成果をGIS上に整理し、それらのデータのGoogle Mapへの反映を、Google Map APIが有するKMLデータおよび画像データの地図上へのオーバーレイ機能を主に用いたて行なった。また、地域Bで得た成果を踏まえながら、1年目から実施してきた座談会とWSの内容・運営方法を合意形成の方法論の観点から検証した。最後に、これまでの一連の研究、実践支援の成果を、計画・方法論的に積み上げ体系化して「中山間地域における内発的の農地保全の支援手法」を構築した。 2.地域B(山口県長門市俵山地区) 住民の内発的な行動を促すとされる地域愛着に着目し、その概念整理と評価尺度の検討を行った上で、地域愛着に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。調査対象地は山口県長門市俵山地区である。共分散構造分析の結果から、地域愛着に影響を及ぼす要因として【住民の人柄】や【住民との交流】など4つが明らかとなった。またヒアリング調査から、定量分析では除外された【来訪者との交流】を含め4つの要因を抽出した。さらに、これら8つの要因間の関係性を明らかにした。
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