研究課題/領域番号 |
25850170
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
井上 敬資 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所施設工学研究領域, 主任研究員 (60414455)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 物理探査 / 電気探査 / 比抵抗 / 亀裂 / モニタリング / 土構造物 / 浸透 |
研究概要 |
電気探査によって解析される比抵抗分布の物理的解釈の適用範囲を検討するため,室内実験において、土質試料の密度,飽和・不飽和による比抵抗特性を計測した.飽和・不飽和それぞれの状態での密度変化による比抵抗変化は小さかったが,不飽和時に対する飽和時の比抵抗の変化率は密度との相関が大きかった.浸透に伴う比抵抗の変化を計測し,土質の状態を推測することが効果的であることが確認された. 次年度に実施予定であった屋外実験の一部として,亀裂を有するため池堤体において,既存の電気探査計測器を用いて,降雨の前後において比抵抗モニタリングを行い,堤体内部の比抵抗の変化を計測した.地表部で確認された亀裂部から堤体内部へ伸びる比抵抗変化が時系列に解析された.亀裂部へ雨水が浸透することによる体積含水率の変化により比抵抗が変化したと推定された.浸透水をモニタリングの指標として電気探査を行うことで,堤体内部を非破壊で検出可能であることを確認した. 注入物質の浸透状況を短時間間隔で可視化するために,多点同時送信による時間分解能の高い高速電気探査システムを構築し,探査装置の適用範囲の検討を行った. 亀裂周辺の浸透と体積含水率の変化を検討するため,高透水部を有する斜面モデルにおいて飽和・不飽和浸透解析を行い,体積含水率と地下水面の時系列変化について検討を行った.飽和・不飽和特性により,地下水面以下のみならず,地下水面付近においても体積含水率の変化が小さいため,本手法を適用する際には注意が必要であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内実験において実施予定であった,亀裂の幅・地盤の密度・注入材料・飽和不飽和の違いによる浸透特性の把握および浸透状態における比抵抗分布の特性、探査によって計測される電位分布の特性の把握は達成されていないが,探査で得られた計測結果による地盤内部の状況を解釈するための判断材料となる,地盤の密度・飽和不飽和の違いによる計測データの変化について検討を行った. また,次年度以降に実施予定だった,屋外試験の一部を先行して行い,測線計画・探査機器の設定の検討を行うと共に,浸透現象等の事前情報を組み込んだ比抵抗逆解析手法を検討するため,高透水部を有する斜面モデルにおける飽和・不飽和浸透解析を実施し,浸透による体積含水率の変化および地下水面の変化について検討を行った. これらにより,一部遅れている部分もあるが,先行して行っている内容もあり,順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、残額と合わせて研究計画遂行のために使用する。 今後は,屋外実験において、複数の亀裂・地盤ケースにおいて、地表面からの探査を行い、地表面のみに設置した測線からの探査データおよび比抵抗分布の推定精度を検証する。また、探査結果と浸透現象を合わせた浸透域の推定法を検討し、探査結果の精度向上及び探査結果からの現象把握の高度化手法を検討する。そして、実規模の地盤において、本手法の適用範囲の検証を行い、電気探査手法による亀裂部推定に効果的な数値解析手法および効果的な測線配置および電極配置を提案するとともに、適用限界を示す。なお、災害現場で検討が行えない場合は、所内盛土等で実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
高速電気探査機器を構築し,その制御のためのソフトを購入予定であったが,探査機機器の調整が長引き,必要とする仕様を検討するため,購入を次年度行うことにした. 当該年度に構築した電気探査機器の特性と探査対象とする現象の時間的変化特性を踏まえて,計測機器の制御ソフトを購入する.
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