土構造物に発生した亀裂等の被災範囲を非破壊で把握する手法の提案を目的とし、亀裂に石灰水を注入し、電気探査により地盤の被災範囲を工事着工前に把握する手法の基礎的検討を行った。 電気探査によって解析される比抵抗分布の物理的解釈を検討するため,室内実験において、土質試料の密度,飽和・不飽和による比抵抗の特性を計測した.飽和・不飽和それぞれの状態での密度変化による比抵抗変化は小さかったが,不飽和時に対する飽和時の比抵抗の変化率は密度との相関が大きかった.浸透に伴う比抵抗の変化を計測し,土質の状態を推測することが効果的であることが確認された. 電気探査結果と浸透シミュレーションを合わせた浸透域の推定法を検討し,探査結果の精度向上及び,探査結果からの現象把握の高度化手法を検討した.地下水涵養試験における比抵抗モニタリングにおいて,透水係数モデルを複数作成し,浸透流と電気探査のシミュレーションにより電位応答を計算した.計算された電位応答と実際の観測値を比較したところ,誤差が一番小さいモデルは実際の湛水状況とおおむね一致した.電気探査から解析された比抵抗モデルからの推定では困難であった透水場の不均一性を浸透流解析と合わせることで評価できる可能性が示された. インテイクレート試験において,高速電気探査による比抵抗モニタリングを行った.埋設した水分計と比抵抗変化が一致し,浸透状況を30秒間隔で3次元的に可視化することができた.また,亀裂を有する実規模のため池において,亀裂に石灰水を注入し,高速電気探査で比抵抗モニタリングを行った.数分間隔の経時変化を可視化し,浸透方向が推定された.長時間経過した後の石灰水の分布は亀裂部への浸透かその周辺への浸透かの区別が困難な場合があるが,高速電気探査では,浸透する方向を捉えることができ,被災形態を把握する上で重要なデータとなると考えられた.
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