研究課題
収穫後のホウレンソウを、鮮度保持効果が期待される5%または10%の低酸素濃度区、および20%酸素濃度の対照区に最大8日間静置する貯蔵実験を行い、膜透過性に関するパラメータであるイオン漏出割合(IL)とイオン漏出割合(Ks)と細胞膜水伝導係数(Lp)、および膜脂質過酸化のパラメータであるマロンジアルデヒド(MDA)当量の期間中における変化について検討した。また同時に、ホウレンソウ葉の異なる5つの位置における可視近赤外スペクトルを測定し、IL、Ks、Lp、およびMDA当量をそれぞれ目的変量としたPLS回帰分析を行うことにより、生体膜の健全性をスペクトルから推定可能であるかどうかについて検討した。貯蔵中における膜透過性の変化について、ILとKsでは低酸素貯蔵による鮮度劣化抑制効果が貯蔵8日目まで観察されなかったのに対して、Lpでは貯蔵2日目にその効果が認められた。これにより、Lpが最も早期に膜透過性増大を検知できる指標であることが示された。また、貯蔵中の膜透過性(IL、Ks、Lp)と膜脂質過酸化物(MDA当量)の関係について検討した結果、膜脂質過酸化物が膜透過性の増大に先行して増加することが明らかとなった。さらに、MDA当量が約150 nmol/gDW、および200~450 nmol/gDWに達した時点で、それぞれLp、およびILが急増した。これにより、膜透過性の増大は、膜脂質過酸化物が一定量以上になったことによって生じる可能性が示された。他方、PLS回帰分析により、ホウレンソウ葉では、KsとMDA当量についての予測モデル構築が可能であることが示された。これらの結果より、膜透過性と膜脂質過酸化物との関係性から生体膜の機能劣化の機序を定量的に明らかにすると共に、可視近赤外スペクトルを用いた生体膜の健全性評価を通した青果物の鮮度評価技術構築の可能性を示した。
すべて 2014
すべて 学会発表 (4件)