研究課題
若手研究(B)
課題1.CO2施用下において葉が吸収した後のCの分配・集積プロセスの解明葉群によるCの吸収(群落光合成速度)を把握するために,温室(1,000 ppm程度)における炭酸ガスの各収支項(施用速度,損失速度,土壌呼吸巣度)の評価システムを確立し,収支式の残差として植物による炭酸ガスの吸収速度すなわち光合成速度の長期モニタリングを行った.その結果,光合成速度の動態と環境作用の評価が可能であることが明らかになった.次に,葉に吸収されたCがどのような割合で各器官に分配され集積するのかを明らかにするために,栽培1カ月後の植物体を採取し,器官別(葉,茎,根)の乾物重とC含量を調べた.その結果,炭酸ガス施用による光合成の増加と関連して,とくに葉におけるCの集積が高い傾向にある事が示された.課題2.異なる肥料濃度管理下において根が吸収した後のNの分配・集積プロセスの解明根群によるNの吸収(養分吸収)を把握するために,根の養水分吸収速度の評価システムを用いて,異なる肥料濃度条件下(低濃度,高濃度)におけるN吸収の動態を長期的に評価した.次に,根に吸収されたNが,その後,生長に伴いどのような割合で各器官に分配され集積するのかを明らかにするために,栽培1カ月後の植物体を採取し,器官別(葉,茎,根)の乾物重とN含量を調べ,さらにC含量との関係を明らかにした.
2: おおむね順調に進展している
課題1および課題2は研究計画に従って適切に実施されており,当初の目的の大部分を達成できたと考える.したがって,「おおむね順調に進展している」と判断した.しかしながら,当初計画において一部未達な項目もあり(生長に伴いどのような割合でCとNが各器官に分配され集積するのかを明らかにすること),この点については次年度の課題としたい.
初年度における未達成の課題(生長に伴いどのような割合でCとNが各器官に分配され集積するのかを明らかにすること)を試みるとともに,分配・集積プロセスと生産性との関係を総合的に評価し,合理的な環境調節の具体案(生産性を最大限発揮するCO2施用と肥料濃度管理の組合せ条件)を提示してその実証試験を行う.なお,生産性に及ぼす環境調節の効果をより短期で観察するために,材料植物として従来のピーマン,キュウリ以外に,葉菜類の使用も検討する.課題1.CとNの分配・集積プロセスと生産性との関係の総合評価課題1,2で得たデータに基づいて,CとNの分配・集積プロセスが生産性(栄養成長,生殖成長,収量)に与えるインパクトを明らかにするために,光合成能に強く影響する葉のN含量,開花・着果・果実成長,ソース・シンクの動的なバランスなどに着目した総合的な解析を実施する.とくに,生産性に対して律速要因になり得る分配・集積プロセスの特定を行う.課題2.CとNの分配・集積プロセスにも着目した合理的な環境調節案の提示と実証課題1で示す律速要因を考慮して,生産性を最大限発揮するCO2施用と肥料濃度管理の組み合わせの最適条件を提示する.さらに,その効果を実験的・理論的に検証するための栽培試験を行う.
当該年度の研究計画における一部未達成の項目が発生し,それに伴い分析サンプル数が減少し,必要となる経費(試薬,消耗品等)も減少したため.前年度に未達成の項目について改めて取り組むことで,次年度使用額の使用を適切に行う予定である.
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)
Environmental Control in Biology
巻: 51 ページ: 89-94
10.2525/ecb.51.89
Water Science & Technology
巻: 68 ページ: 776-782
10.2166/wst.2013.258
Biologia
巻: 68 ページ: 1109-1112
10.2478/s11756-013-0256-5
Biologi
巻: 68 ページ: 1113-1117
10.2478/s11756-013-0255-6
http://www.cc.kochi-u.ac.jp/~yasutake/