研究課題
環境調節を駆使した植物生産性の向上を目的として,植物による炭素(C)と窒素(N)の吸収プロセス(葉の光合成と根の養分吸収)だけでなく,吸収した後のCとNの分配・集積プロセスの環境応答と生産性へのインパクトを解明して制御するための基礎研究を行った.課題1.CO2施用下において葉が吸収した後のCの分配・集積プロセスの解明葉群によるCの吸収(群落光合成速度)を把握するために,ピーマン栽培の温室(1,000 ppm程度)におけるCO2の各収支項(施用速度,損失速度,土壌呼吸巣度)の評価システムを確立した.収支式の残差として植物によるCO2の吸収速度すなわち群落光合成速度のモニタリングを行い,CO2施用による光合成速度の促進効果を長期間に渡って明らかにした.さらに,光合成によって吸収されたCの果実への輸送(転流)についても,EDTA法(Araki et al., 1997)を用いて評価した.CO2施用によってとくに午後の転流速度が有意に増加し,日積算値は有意差は見られなかったものの,対照区より約22%増加した.課題2.異なる肥料濃度管理下において根が吸収した後のNの分配・集積プロセスの解明CO2施用による成長・生産促進効果を最大限に発揮させるために,肥料濃度の組み合わせの効果を調べた.なお,材料植物としては実験の効果を明確に観察し,さらに限られた期間で栽培を行うために成長が早い葉菜類のサラダナを用いた.実験条件として,CO2に関して施用区(800 ppm)と無施用区,肥料濃度に関して低EC区(電気伝導度EC 1.2 dS m-1)と高EC区(2.5 dS m-1)を組み合わせた4処理区を設けた.CO2施用によって吸水量はCO2無施用と比べて減少したもののN吸収量は増加し,CO2施用による植物の養分要求が増加したことが観察された.この効果は,低EC区よりも高EC区においてより顕著にみられた.植物体内におけるCとNの分配については,処理区間で有意な差は見られなかった.
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