前年度に引き続き,野外における森林衰退モニタリングを目的として,ハイパースペクトルカメラによる観測手法の開発を継続しつつ,広域モニタリングを目的としてドローンへの搭載が可能な小型マルチスペクトルカメラの導入を行い,その観測手法の開発を行った。森林衰退のモニタリングにおいては継続的な観測が必要となるが,いずれの機器においても観測データをそのまま活用すると同じ観測対象であっても日照条件等の環境によって異なる解析結果が算出されてしまうという課題が発生していた。これを解決するために,日照の異なる観測条件でも観測が可能なように,スペクトルセンサーにおけるキャリブレーションと同様に標準となる観測物を設定・観測し,ハイパースペクトルカメラとマルチスペクトルカメラそれぞれで異なる日照条件でも同じ観測結果を収集できる観測体制を整えることができ,これにより森林衰退の長期モニタリングを実現することができた。また,森林衰退の広域モニタリングに対応するためにドローン搭載のカメラによる画像をつなぎ合わせるモザイク処理技術についても開発を行った。ドローン搭載カメラはもともと広角レンズを搭載したものが多く,樽型歪みが含まれているため,これを補正し,さらにSIFTおよびSURFと呼ばれる画像特徴量を利用して複数画像の共通の特徴点を抽出し,画像をつなぎ合わせる技術の開発を行った。 本研究で得られた技術を用いることで広域の森林衰退モニタリングが可能となった。本研究では松の枯死を対象として技術開発を行ってきたが,今後は本技術を用いて多種の森林衰退モニタリングを実施する計画を立案中である。
|