研究課題/領域番号 |
25850179
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
石塚 直樹 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20414500)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成開口レーダ / 飼料用トウモロコシ |
研究概要 |
日本の飼料自給率は25%と低く、さらに輸入穀物・飼料価格の高騰から、安定した飼料の供給と食料自給率向上のため、日本各地で飼料作物の生産量が増加している。一方、飼料用のトウモロコシの作付面積は、平成19年度以降、市町村単位の統計値が公表されなくなり、作付状況に関する客観的な情報を得ることが困難となった。この背景のもと、衛星データを用いたトウモロコシ作付圃場の把握に期待が寄せられている。本研究では、飼料用トウモロコシ作付圃場を雲の影響を受けずに観測可能なLバンドの合成開口レーダ(SAR)データを用いて毎年確実に抽出する技術を開発するとともに、将来的な衛星SAR利用の適用範囲拡大のための基礎的な情報収集を行う。 国産LバンドSAR衛星のだいち2号機(ALOS-2)は、諸般の事情により打ち上げが2014年に延期となったが、ALOS-2と同様のLバンドSARセンサを搭載した航空機SAR(Pi-SAR-L2)による観測が対象地域で行われたため、そのデータで研究を遂行した。航空機観測は3回(6、8,9月)行われ、航空機観測に同期した現地調査を行った。 対象地域において、飼料用トウモロコシを中心に作付品目の確認を行うとともに、サンプル圃場において飼料用トウモロコシの移植密度・稈長やバイオマス計測を行い、SARによって観測された後方散乱係数と比較を行った。その結果、強度データのみを用いた場合、全体の作付け分類精度は6~8割となった。一方、8月の位相情報を含めた4偏波データを用いた場合、全体の分類精度は7~9割弱となり、飼料用トウモロコシの作成者精度は9割を超えた。さらに、当初計画において、チャレンジングな課題として「出来れば」と設定していた大まかな収量区分について、8月の観測において、その可能性を示唆するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸般の事情によりALOS-2の打ち上げが延期されたため、当初予定していた2013年の衛星を利用した実験・研究を行うことはできなかった。一方、JAXA協力のもと、ALOS-2と同じLバンドSARセンサを搭載した航空機SARによる実験を行うことができた。また、本研究においてチャレンジングな課題としていた収量分類について、1度だけの限定的な結果とはいえ、可能性を示唆する結果を得ることができたのは大きな収穫である。今後、衛星の打ち上げを待って、衛星による事象の再現性の確認を行うとともに、現象発生の過程や、堅牢性・汎用性の確認など行う予定である。 衛星打ち上げの遅延は個人がどうすることもできない外因であるとはいえ、当初の計画からすれば遅延といえる。一方、限定的ながら予想以上の良い結果が得られたことから、プラスマイナス0と考え、概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
諸般の事情により打ち上げが延期されてきたALOS-2であるが、2014年5月24日(土)に打ち上げが決定された。打ち上げ後、アンテナ展開などの後、初期校正等の作業が行われ、通常観測に移行するには数ヶ月を要する。したがって、定常観測が行われるのは、2014年秋になる予定であり、2014年産の飼料用トウモロコシの栽培期間に間に合うかどうかは、不確定な状況である。一方、JAXAは2014年も航空機SARによる観測が計画している。JAXAの予算の制限から、2014年については観測が1回となってしまう可能性が高いが、昨年同様に、地元の根釧農試やTMR(Total Mixture Ration)センターに協力して頂きながら同期現地調査等を行い、衛星によるモニタリングのための予備実験を行う。来年度については、ALOS-2が順調に運用されれば衛星データを用いた観測が生育期を通じて可能となる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
諸般の事情により利用予定である衛星ALOS-2の打ち上げが延期され、当初予定していた2013年の衛星を利用した実験・研究を行うことができなかったため。 ALOS-2衛星は2014年5月に打ち上げ予定となる。通常運用は今年の秋になる予定であり、今年度も衛星を用いた観測は不確定である。一方、航空機SARによる観測が8月に予定されていることから、今年も航空機SARデータによる研究を行う。 2015年度に衛星データが利用可能となる予定であり、その際に残金を利用する。
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