国内で生産される飼料の多くは,嫌気条件下で乳酸発酵しサイレージとして貯蔵される。サイレージ調製において原料の水分は発酵の成否に大きく影響するが,これまで水分等を測定するには原料のサンプリング,すなわち飼料およびラップフィルム等の被覆資材を破壊する必要があった。一方で近年は,水田転作等の作物として飼料イネやトウモロコシの作付が促され,近隣に畜産農家が存在しない地域でも国産粗飼料が生産,およびロールベール状で流通されるようになりつつあり,水分測定の必要性は一層高まっている。 そこで本研究では,ロールベールラップサイロ等の飼料を想定して,内部水分の非破壊計測技術を開発する目的で,サイレージへ電磁波を透過させるとともに内部水分との関係を検討した。 まず,ロールベールに触れずに電磁波を透過させる実験を行なった。水分20~80%のロールベール・ホーン型アンテナおよびベクトルネットワークアナライザを供試して電磁波を測定したところ,検出は可能だったがロールベール内での多重反射が認められ,透過した電磁波の減衰と内部水分との明確な関係性は認められないことが明らかとなった。 次に,電磁波伝送路の1つである導波管を活用して小規模実験を行なった。水分32~80%のトウモロコシサイレージを導波管へ封入して電磁波を透過させたところ,ベクトルネットワークアナライザで測定された電磁波の,サイレージ透過前後における位相および振幅の変化は,原料水分が同一の場合は導波管へ投入するサイレージの量や密度にかかわらず直線的な関係にあることが確認された。また,透過した電磁波と水分との関係を検討したところ,原料水分の変化に応じて位相と振幅の傾きは直線的に高まる傾向が確認され,サイレージ中の水分を非破壊計測できる可能性が見いだされた。
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