研究課題/領域番号 |
25850181
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中村 宣貴 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所 食品工学研究領域, 主任研究員 (50353975)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生体内溶存酸素濃度 / 青果物 / 酸素センサ / ガス環境 |
研究実績の概要 |
本年度は、トマト果実を対象として、外部環境の酸素濃度が急激に変化した場合の果実内溶存酸素濃度の変動を測定した。事前に、安定的な環境下で1日保存したトマト果実について、異なる部位での溶存酸素濃度を測定した。25年度の報告と同様に、測定部位により溶存酸素濃度が異なること、また、それは果実内の構造(ゼリー部、隔壁部など)に依存することが示唆された。 密閉系にて、周囲ガス濃度を①大気→②窒素100%→③大気と変化させ、溶存酸素濃度変動を測定した。①において、初期濃度は5 mg/L程度であった。②においては急激に溶存酸素濃度が低下し、10-20分程度でほぼ0 mg/L程度に低下した。③において大気条件下に戻した際には、初期の溶存酸素濃度に至るまでには、40 -60分程度を要した。②と③において、溶存酸素が安定するまでに要する時間が異なるのは、トマト自身の呼吸による酸素消費に起因すると考えられた。 このことから、果実内のガスの拡散および酸素吸収速度の濃度依存性というパラメータを導入することで、果実内ガス環境分布のモデル化が可能であると考えられる。一方で、部位ごとの溶存酸素濃度はその組織構造に大きく左右されることも明らかとなった。これについては、今後の検討課題である。 生鮮青果物流通で用いられるMA包装において、温度変動もしくは包装設計の不備による嫌気呼吸の発生事例が散見される。本研究の結果により、MA包装条件下では、生体内の酸素濃度は低減しやすく、一旦、低酸素条件になった生体内環境は元に戻るのに時間がかかることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
周囲環境が変動した場合の生体内溶存酸素濃度の測定方法については概ね確立した。また、青果物対象品目をトマトに決定し、生体内溶存酸素濃度のデータ取得を着実に進められた。 一方、呼吸に関連する遺伝子もしくは酵素活性の計測については、26年度に実施することが出来なかった。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
酸素センサを用いた測定方法については確立には至ったものの、測定中のセンサの破損が多く、実験の遂行に支障が出ていた。研究対象品目として数種類の青果物を検討していたが、酸素センサでの溶存酸素測定が容易なトマト果実に対象を限定することとした。これにより、生体内の酸素濃度分布及びシミュレーションを実施するだけのデータ取得が可能となったと考えている。 また、本研究課題内では、生体内酸素濃度と呼吸関連、特に嫌気呼吸関連の遺伝子もしくは酵素の活性との関連についても検討予定である。しかし、前述の酸素センサによる測定の不備により、研究が遅延している。呼吸関連遺伝子もしくは酵素の活性については、27年度に実施予定であるが、これらの実験結果と生体内溶存酸素濃度との関係が明確でない場合、対象物からのエタノール生成のデータで代替することを検討する。
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