研究課題/領域番号 |
25850186
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
山中 賢一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40572920)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胚発生 / ウシ / 高温ストレス / リソソーム |
研究実績の概要 |
本年度は、まず高温ストレス受けたウシ体外受精胚におけるカテプシンBのタンパク質発現および活性を体外発生の全ステージにおいて検出することで高温ストレスの影響がどの時期に現れ、発生停止につながるのかについて精査することを行った。その結果、コントロール区ではカテプシンBのタンパク質発現および活性が1および2細胞期に比較すると4-8細胞期以降の胚で減少し、さらに桑実期および胚盤胞期ではより顕著に減少することが明らかとなった。一方、高温ストレス区では、タンパク質発現についてはコントロール区と顕著な違いは、見られなかったが、活性に関しては、9-16細胞期以降の発生ステージにおいて、活性が高いことが示され、リソソーム機能への影響が示唆された。 次に、高温ストレスがリソソーム機能に及ぼす影響についてより詳細に調べるために、リソソームの局在とリソソームが深く関与するオートファジーについて調査を行った。リソソームの局在は、受精前のGV期およびMII期に比較すると受精後の胚でリソソームの数またはサイズが増加する傾向が観察された。特に、5-8細胞期および9-16細胞期では、そのような増加が顕著に観察された。次に、オートファゴソーム膜の結合タンパク質であるLC3検出した結果、GV期で多数のオートファゴソームが検出され、MII期ではその数が減少した。その後、受精によってオートファゴソームが増加し、9-16細胞期から桑実期においてはオートファゴソームが細胞膜直下にみられ、胚盤胞期では減少することが明らかとなった。これらの結果は、マウスと同様にウシにおいても胚発生過程においてリソソームが重要な役割を果たしていることを示しており、高温ストレスによるそれら機能への影響および発生停止との関係について今後より詳細な検討を行う必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに卵成熟、受精、胚発生過程における高温ストレスによってカテプシンBの活性が過剰に誘起されること、それらを抑制することで発生能を改善できることを明らかにしており、本研究課題の目的として挙げている3つの課題のうち2つについては本年度までに概ね達成できたと考えている。さらに、本年度ではリソソーム内の酵素であるカテプシンBのみならず、ウシでは報告のないオートファジーに関しても検討を行い、新たな知見を得ることができた。 以上のことより、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、カテプシンB活性を制御した体外生産胚を移植することにより、受胎率の検証を行い、体外生産胚の高品質化に寄与できるかについて検証行う予定である。加えて、本年度より新たに着手したオートファジーと胚発生との関係についても詳細な検討を行い、体外生産胚の高品質化に関する知見を得たいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金およびその他の費目での支出が予定していたよりも少かったために生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度でもあることから、論文投稿料等の成果発表に係る支出が大きくなると予想される。したがって、それらに対して、これらの繰越額を使用する計画である。
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