研究課題
前年度までに体外培養中にストレスを負荷された受精卵ではリソソーム内のタンパク質分解酵素カテプシンBの活性型が高まることあきらかにしている。そこで、最終年度では、受精卵にとって大きなストレスとなることが考えられるガラス化保存がカテプシンBに及ぼす影響について調べるとともに、それらの活性を制御することでガラス化保存後の受精卵の品質を改善できるかについて研究を実施した。その結果、ガラス化保存した受精卵では融解後のカテプシンBの活性およびアポトーシスの発生率が非ガラス化区と比較して高いことが明らかとなった。さらに、融解後の回復培養においてカテプシンBの活性を阻害することで、アポトーシスの発生を抑制することができ、ガラス化保存受精卵の高品質化につながることが明らかとなった。研究期間全体を通じての研究成果を挙げると、1年目は受精卵の体外生産系の各培養過程における高温ストレスは卵母細胞および受精卵のカテプシンBの活性を高めるとともに発生能の低下を引き起こすこと、さらにこれらの活性を阻害することで発生能を改善できることを明らかにした。2年目はウシ卵母細胞の成熟前から胚盤胞期までのカテプシンBの発現および活性動態、さらにカテプシンBが関わる細胞内の物質分解に関わるリソソームおよびオートファゴソームの動態についても解析を行い、それらの動態が発生の成否に大きく関わっていることを示した。3年目は、前年度までの成果をもとに、カテプシンB活性の制御によりガラス化保存した受精卵の品質を向上できることを明らかにした。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
The Japanese Journal of Veterinary Research
巻: 63 ページ: 159-171
10.14943/jjvr.63.4.159