研究課題
本研究では、孵化直後のニワトリ初生ヒナに対するβ2アドレナリン受容体作動薬(クレンブテロール)の単回投与による骨格筋重量増加と腹腔内脂肪組織重量減少の作用機序を明らかにすることを目的とした。平成26年度までに、クレンブテロールを投与したヒナでは、大腿部の骨格筋である縫工筋重量が増加すること、および腹腔内脂肪重量が減少することを明らかにした。加えて、クレンブテロールを21日間給与したヒナの縫工筋においてリン酸化AKTの有意な増加が認められた。平成27年度は、クレンブテロールによって活性化されるβ2アドレナリン受容体の細胞内シグナルカスケードを明らかにすることを目的とした。孵化直後のヒナを用いて、腹腔内へのクレンブテロールの単回投与を行い、縫工筋におけるAKTのリン酸化割合とAKTによってリン酸化される転写因子FOXO1のリン酸化割合を経時的に調べた。クレンブテロール投与の1時間後に縫工筋におけるAKTのリン酸化割合は増加し、3時間後にはFOXO1のリン酸化割合も増加した。加えて、FOXO1転写因子の標的遺伝子であるatrogin-1/MAFbxとMuRF1のmRNA発現量は、クレンブテロール投与3時間後に有意な減少を示した。さらに、細胞質タンパク質と核タンパク質をそれぞれ抽出し、FOXOの発現を調べた結果、核内のFOXO1タンパク質の発現量は減少し、細胞質のリン酸化FOXO1タンパク質の発現量は増加した。本研究の結果より、クレンブテロールにより骨格筋のβ2アドレナリン受容体を活性化させると、AKTを介してリン酸化された転写因子FOXO1が細胞質側へ移行し、FOXO1の標的遺伝子であるatrogin-1/MAFbxとMuRF1のmRNA発現量が減少することが示唆された。骨格筋特異的なユビキチンリガーゼであるatrogin-1/MAFbxとMuRF1のmRNA発現量が減少した結果、ユビキチンプロテアソーム系のタンパク質分解が抑制され、骨格筋へのタンパク質の蓄積量が増加することが示唆された。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1080/09168451.2016.1158629
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栄養生理研究会報
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