研究課題
若手研究(B)
本研究では初期成長期における個体の代謝調節ネットワークシステムについて、脳移植技術によって検出できる脳と末梢の相互作用(代償的反応)に着目し、解析することを目的とした。本年度はマイクロサージェリー法を用いて本来の脳と末梢器官が異なる脳キメラ鶏を作出し、得られた脳キメラ鶏の成長指標(摂食量、増体量、組織重量)の解析を試みた。肉用鶏種卵(Broiler:B)および産卵鶏種卵(Layer:L)を解析に使用し、移植に供した組合せは①BB(脳:B × 末梢:B)、②BL(脳:B × 末梢:L)、③LL(脳:L × 末梢:L)および④LB(脳:L × 末梢:B)とした。また、BおよびLの卵殻に穴のみあけたものを偽手術区とした。その結果、14羽(BB:1, BL:5, LL:4, LB:4)の脳キメラ鶏の孵化に成功した。脳キメラ鶏のchromobox-helicase-DNA-binding (CHD)の性特異的DNA領域を解析したところ、脳および末梢で異なる電気泳動像が確認できた。このことから肉用鶏および産卵鶏を用いたマイクロサージェリー法によって脳と末梢の遺伝子型が異なる個体が誕生したものと考察された。BLの孵化11日齢(P11)時における体重、増体重、飼料効率、肝臓重量ならびに浅胸筋重量はLLに比べて高くなる様相であった。このことは、肉用鶏の脳特異的な肝機能ならびに浅胸筋における筋形成、さらにはエネルギー効率を高める働き(因子)を有する可能性を示唆するものであった。今後は脳キメラ鶏の供試数を増やすとともに、分子生物学、生化学的手法を用いて定量的・定性的解析を行うことで、これら初期成長に影響を及ぼす脳内制御因子を同定することが期待されるものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の核心である初期成長に影響を及ぼす脳内因子の定量的・定性的(スクリーニング)解析は今後、勢力的に行う必要があると考えられるものの、解析に必要な脳キメラ鶏の作出、ならびに表現型解析には一定以上の成果が挙げられたと判断できる為。
脳キメラ鶏の脳(視床下部領域)、末梢器官(肝臓ならびに筋肉)および血液を用いて表現型との関連について分子生物学、生化学的に調査する。具体的には脳および末梢器官からはウエスタンブロッティング法を用いてInsulin receptor, AKT, mTOR,GSK, Myogenin, Pax7を測定するとともに、各組織のグリコーゲン含量ならびに血液中のグルコース、インスリン、遊離脂肪酸、トリアシルグリセロールなどのホルモン、栄養素なども測定する。これらによって検出された脳キメラ鶏の表現型のエネルギー代謝調節機構について評価する。また、採取した脳サンプルについては定法によりタンパクを抽出し、二次元電気泳動法を用いて得られた表現型と関連する脳内タンパク質について同定を試みる。
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